感染力の指標 麻疹はインフルエンザの10倍?

感染力の指標 基本再生産数とは? どのくらいの値だとどの程度の感染力?

たまに麻疹や風疹が流行するタイミングがある。

麻疹は感染力はとても強く、1人でも麻疹となると医療機関では接触者の特定、予防接種歴を調べ、緊急の接種をしたりと感染予防を徹底することになる。

よく麻疹はインフルエンザの10倍の感染力で感染力が強いとか言う記載を見る。
この「感染力が強い」というのはどのような基準で表現しているのか。

ある集団であればそこでの「感染率、発症率」を見ればいいんでしょうけど、一般の人の参考にはあまりならない気がする。(例:院内発症率)

いろいろ調べてみると、「基本再生産数」というものが感染力の指標として出てくる。


基本再生産数とは?

基本再生産数は、1人の感染者から二次感染をさせる平均的な人数と表現される。※1

例)インフルエンザの基本再生産数は2人と言われている。
→インフルエンザの患者1名は、2人に感染を広げる。


上記は簡単に考えた場合であり本来はもう少し定義が複雑

詳細な定義

「基本再生産数:Ro」とは,ある1人の感染者が完全な感受性集団に入ってきたとき、その感染者から平均で何人が感染するかという数

式:Ro=β×κ×D
※β:1回の接触当たりの感染確立 κ:一定時間あたりの接触頻度 D:感染力を有する期間 

集団の定義が「完全な感受性集団」となっているので、免疫がある人もいるので、実際の感染は基本再生産数より小さくなると考えられる。


βが一回接触当たりの感染確率となっているのですが、これはどのように出すのでしょうか。

こちらの文献では以下のように推定している。※2

"2.3.3 接触感染率β*の推定  動的解析で使用する,感受性者Sと保菌者 Eが隣接した場合の感染率(接触感染率)β*は,発症数の算定に重要なパラメータであるが湿度や温度に大きく影響し10) ,一般的な値が知られていないため8) ,その値を動的解析により算出する. 4m四方を1マス2㎝四方で,200×200マスに分割する.そして,咳をする E と S を1.5m 離して対峙さ せる.Eは1回の咳で100,000個程度のウイルスを発するといわれている11) .また,インフルエンザが感染するために必要なウイルス数は,咳やくしゃみで出た飛沫の大きさにも依存する12)ので,一定の値で示す のは困難である.本研究では1日に10,000~15,000個 (平均12,500個)を吸入すると感染すると想定した."

その時の環境でも変化するが、感染経路、ウイルスの排出量、感染成立に必要とされているウイルス量等様々な要因を解析し、予想している。

それぞれの感染症に対してこのようなことをやっているんでしょうか。
実測値から求めているものありそうですが。
とりあえず簡単に、複雑な計算をして、接触時の感染率を推測していると思っておきます。


基本再生産数と予防接種

上記の定義で行くと、基本再生産数が1を超えてくるとひたすら感染が広がることになる。

例)基本再生産数が5の場合、治る前に1人が5人に感染を広げる。その5人がさらに5人ずつに感染させて・・・となる。
基本再生産数が1未満であれば何もしなくても勝手に収束することになる。


この基本再生産数をもとに予防接種でどのくらいの人に免疫が付けばよいか(免疫獲得率)を算出する。


例)インフルエンザの基本再生産数は2人である。
このままではどんどん広がっていくので、予防接種で押さえたい。
予防接種により何人の人に免疫が付けばよいのか?

1人から感染するであろう2人のうち、1人に免疫が付けば広がるのは1人だけになる
よって予防接種により50%より多くの人が免疫を獲得できればよいと感がられる。

こんな感じで考えるそうです。


式にすると
必要な免疫獲得率(%)=(1-1/基本再生産数) ×100

基本再生産数が5人なら(1-1/4)×100=75%
つまり、5人のうち75%=4人に免疫が付けば広がるのは1人になるので大丈夫ということ。

要は予防接種して、基本再生産数を見かけ上1未満にすればいいということ。



表的な感染症の感染力(基本再生産数)一覧※1、3


麻疹:12-18
百日咳:12-17 ※4では16-21
水痘:8-10
風疹:6-7 ※1では5-8
流⾏性耳下腺炎(ムンプス):4-7
ポリオ:5-7
天然痘:5-7 →根絶
季節性インフルエンザ:2-3
H1N1インフルエンザ:1.4-1.6
中東呼吸器症候群(MERS):0.8


空気感染するのは麻疹、風疹、水痘(飛沫核感染)
基本再生産数の式には接触頻度も入っているのでこの辺は考慮されている値のはず。

Roが10を超えるようなものは予防接種で免疫を90%以上獲得しないといけない。
(獲得できているので大流行を防げているのですが)

百日咳は空気ではないけどやたら高いのは咳のせい?
家庭内接触者の2次発症率は80%ともいわれている。
麻疹と違って抗生剤が効くし症状も軽症の場合が多いためそこまで騒がれないのでしょうか。

麻疹はインフルエンザの10倍も感染力がある!というのはこの辺の指標からも間違いではなさそう。


まとめ

感染力を見るとき、
ある集団であれば、発生率を見る。

基本再生産数という「1人の感染者から何人に感染するのか」という指標がある。

この基本再生産数が麻疹はインフルエンザの10倍もある


※1 国立感染症研究所ホームページ
※2 藤長 愛一郎 動的解析手法を用いたインフルエンザ対策の検討
※3 三重大学大学院 名張地区医療学講座(http://www.hosp.mie-u.ac.jp/soshin/web/wp-content/uploads/2017/02/hashika.pdf )
※4 国立感染症研究所 百日せきワクチン ファクトシート 平成29年2月10日

 2019/07/31

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