パーキンソン病治療中のジスキネジアの対応

パーキンソン病の治療中にジスキネジアが発症した場合の薬物治療方針

パーキンソン病診療ガイドライン2018より

ジスキネジアが起こる抗パーキンソン病治療薬

ジスキネジア(L-ドパ誘発性ジスキネジア)はドパミンの血中濃度上昇(最高血中濃度)により起こると言われている。

よって、

・L-ドパ製剤:メネシット、マドパー等

L-ドパを増強する各種薬剤
・MAOB阻害薬:エフピー、アジレクト
・COMT阻害薬:コムタン
・アデノシン受容体遮断:ノウリアスト

により起こる。

※ゾニサミド(トレリーフ)はジスキネジアを悪化させない、させる可能性は低いとされている

この場合の対処法は以下の通り(ガイドライン抜粋)

L-ドパ誘発性ジスキネジアの対応

基本方針


・薬剤を減量する場合は併用しているジスキネジア誘発作用の強い薬剤から減量,中止を試みる.そのうえでL-ドパの少量頻回投与への変更を行う.(と、記載されているがフローチャートでは逆になっている)

・ドパミンアゴニストはL-ドパに比べてジスキネジアが起こりにくいので,ドパミンアゴニストの補充,置き換えを行う.

・アマンタジンは N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体遮断薬であり,抗ジスキネジア作用がある.(長期的には効果が減弱する可能性が指摘されている)

・経口による薬物療法で治療困難なジスキネジアは,L-ドパ持続経腸療法や手術療法を検討する.

・セロトニンアゴニスト,metabotropic glutamate(mGlu)受容体阻害薬,抗てんかん薬などが RCT で試みられているが,現在のところ,いずれも明らかな有効性は証明されていない

・軽症の場合は,日常生活レベルを低下させないので治療は不要である

ジスキネジアの種類

・peak-doseジスキネジア
パーキンソニズムのオン時に現れ,L-ドパ血中濃度の高い時期に一致する.
顔面,舌,頸部,四肢,体幹に舞踏運動として現れる
薬剤の投与量が多いことが原因の 1つであることが知られているため,最初に投与量が多いかどうかについて検討する.

・diphasicジスキネジア
peak-doseより頻度は低い。
L-ドパの血中濃度の上昇期と下降期に二相性に出現し,オン時の間, ジスキネジアは消失している.
下肢優位に出現し,反復性のバリスム様の動きやジストニアが 目立つことが多い.


L-dopa誘発性ジスキネジアはL-ドパ治療 4~ 6 年で 36% 程度に発症するといわれている。

L-ドパおよびL-ドパ/エンタカポン投与群における運動の日内変動の発現抑制に関するRCT についてサブ解析が行われており,そのなかでジスキネジアの発現は発症年齢,L-ドパの量,体重,エンタカポンの併用,女性などが危険因子として挙げられている.


各薬剤について

L-ドパ製剤
1回量を減らして投与回数を増やすことによりL-ドパの血中濃度,脳内濃度のピークを下げ,できる限り持続的ドパミン刺激を試みる

ノウリアスト(ストラデフィリン)
ジスキネジアを増悪させる可能性があるため,減量ないし中止を考慮する

MAOB阻害薬
ジスキネジアを増悪させる可能性があり,減量ないし中止を考慮する.
ただし,適切に L-ドパを減らせば,MAOB阻害薬は日常生活に支障となるジスキネジアへ悪化させることは証明されていない

エンタカポン
L-ドパの半減期を延長させ血漿中濃度の最高値よりトラフを上げる作用が強いためオフ時間を短縮させる効果があり,適切にL-ドパを減らせば日常生活に支障となるジスキネジアを増加させることはない
しかし,日常生活に支障となるジスキネジアが出ている状態のときはエンタカポンが原因になっている可能性があるので,中止を考慮する

ドパミンアゴニスト
L-ドパを減量し,不足分をドパミンアゴニストの追加・増量で補う.
進行期のパーキンソン病が多いので,ジスキネジアを抑制しながらオン時間を維持するためにL-ドパを減量していくと,補充するドパミンアゴニストが比較的大量に必要になることがある.その場合,精神症状などの副作用が発現しやすくなるので, 常用量の範囲を超える場合には注意すべきである.

アマンタジン
原因薬剤の減量・中止を試みても改善しない場合,あるいは薬剤の減量が難しい場合にアマンタジン投与を検討する.
アマンタジンの投与あるいは増量は,パーキンソニズムを悪化させることなくジスキネジアを抑制する.本邦では,アマンタジン投与の上限は 300 mg/日である.
アマンタジンの抗ジスキネジア効果は当初は顕著だが,時間とともに減弱し,8か月ほどで元の状態と同様になってしまう.しかし,アマンタジンを投与されていた症例に対して実薬の継続もしくはプラセボへ変更するデザインの RCT が現在まで 2 つ報告されており,いずれもプラセボへ変更した症例は,日常生活に支障となるジスキネジアがアマンタジン中止群で有意に認められた1.つまり,アマンタジンの抗ジスキネジア効果は 1 年程度で見かけ上は減弱するものの,数年経過しても継続していると考えられる.ただし,アマンタジンは腎排泄であり,腎障害のある患者や高齢者では副作用に注意して低用量から開始する必要がある.

その他(非定型抗精神病薬、抗てんかん薬)
クエチアピン25mgとプラセボを比較した二重盲検交叉試験があるが,無効であった.

また,抗てんかん薬であるレベチラセタムのジスキネジアに関する有用性を検討した3報の RCT のうち,2報は有効である可能性が示唆され,1報は無効という結果だった.いずれも小さな規模の研究であり,レベチラセタムの有用性について結論付けることはできない.

その他,セロトニンアゴニスト,mGlu 受容体阻害薬などについても検討されているが,結論は出ていない.


まとめ 

生活に支障のでるL-ドパ誘発性ジスキネジアがみられた場合、

①:用量は変えずL-ドパの投与回数を増やす(=1回量を減量) 
②:ノウリアスト、エンタカポン、MAOB阻害の減量、中止、L-ドパの減量、ドパミンアゴニスの減量
③:L-ドパの一部をドパミンアゴニストに置き換える
③:②が困難な場合はアマンタジンの投与

※ただし、明確な優先順位はなし
 2019年8月1日

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