イベニティについて 他剤併用と2クール目の是非

イベニティヶ12月投与後、一定期間をおいていれば再投与可能? デノスマブ、テリパラチド、ビスホスホネートとの併用は?

新規作用機序のイベニティ。

フォルテオ、テリボンの骨形成促進作用は骨形成>骨吸収となるため最終的に骨形成が進むのに対し、イベニティは骨形成を促進しつつ、骨吸収を抑制するため、テリパラチドより強力とされている。

イベニティ12ヶ月投与後は何もしないと骨形成マーカーや骨密度低下がみられるためデノスマブの投与等を行うように注意喚起されているが、デノスマブも投与期間が決まっている。

デノスマブ終了後は再度イベニティを投与することは可能なのでしょうか。

イベニティとテリパラチド製剤(フォルテオ、テリボン)の比較


以下審査報告書より

"既存の骨粗鬆症治療薬では、主要な臨床試験において骨折抑制効果を示すのに 2~3 年間 以上を要する場合が多いが(Bone 49 2011; 605-12 等)、本剤は投与 12 カ月時までに新規椎体骨折発生率を73%低減した(表38)。また、本剤は速やかな骨密度の増加作用を示し、20070337 試験における本剤の1年間投与による腰椎及び大腿骨近位部の骨密度 T スコアの変化率は、それぞれデノスマブを約4.5年間及び3年間投与で認められた上昇(N Engl J Med 2009; 361:756-65)と同程度であった。骨形成促進作用を有するテリパラチド製剤は、骨リモデリングを促進することにより骨形成及び骨吸収の双方を促進する一方、本剤はスクレロスチンを阻害することにより骨形成の促進及び骨吸収の抑制作用を示す。 イベニティ皮下注 105 mg シリンジ_アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社_審査報告書 87 20060326 試験及び 20080289 試験では、本剤群及びテリパラチド群におけるベースラインから投与12カ月時までの腰椎、大腿骨近位部及び大腿骨頸部の骨密度変化率が検討され、いずれの部位においても、 本剤群ではテリパラチド群と比較して増加していた。 "

テリパラチド連日との比較試験(20080289)において、骨密度等の変化はイベニティ>テリパラチドのようですが骨折発生は評価項目とされていない。

今後のエビデンス待ちですが、
→現時点ではイベニティ>テリパラチドっぽい


イベニティの2回目(2クール目)投与の是非

では、本題のイベニティの再投与について、添付文書には記載がないが、審査報告書に以下の記載がある。

"再投与期における骨代謝マーカーの推移は図6のとおりであり、初期投与期及びデノスマブ投与期の投与群に関わらず本剤投与時に骨形成マーカーの上昇が認められた。デノスマブ投与期にプラセボが投与された被験者では、急激な血清P1NP の上昇及び血清 CTX の低下を示し、再投与期では初期投与期と同様の推移を示した。デノスマブ投与期にデノスマブが投与された被験者では、デノスマブ投与期に血清 P1NP 及び血清 CTX 濃度が低下しており、再投与期中に徐々に上昇して投与42カ月時までにベース ライン付近に達した。その後、血清 P1NPは投与 48 カ月時まで引き続き上昇し、血清 CTX はベースラ イン付近の値が維持された。

以上より、20060326 試験成績から、12 カ月間のプラセボ投与後に本剤を再投与したときの骨密度の増加及び骨代謝マーカーの変化は、本剤を初回投与した時と同様であることが示された。また、12 カ月間のデノスマブ投与後に本剤を再投与したときの再投与期開始時からの骨密度の増加は、本剤を初回投与 したときと比べて小さかったが、再投与期終了時(投与48カ月時)におけるベースラインからの骨密度の増加は、プラセボ投与後に本剤を再投与したときよりも大きかった。 本剤の再投与時の安全性について、再投与期(投与 36~48 カ月)における有害事象の発現割合は表85のとおりであり、本剤投与歴の有無による違いはなく、再投与期に新たな死亡例は報告されなかった。 本剤投与歴のある集団の 1 例で CTCAE Grade 1 のアルブミン補正血清カルシウム濃度の低下が認められたが、低カルシウム血症関連事象とはされず、無処置で回復した。 以上より、20060326 試験成績から、本剤の再投与時の安全性プロファイルは、本剤の初期投与時と大きく異ならないと考えられた

~中略~

 以上より、本剤の初期投与時の12カ月間の治療後に、治療中止又は他の骨粗鬆症治療薬による継続治療が実施され、その後再度骨折の危険性が高いと判断された場合には、有効性及び安全性の観点から、 本剤の再投与による治療は有用であると考えられる

機構は、以下のように考える。臨床試験成績における本剤を再投与した経験は限られているものの、 初期投与時と比較して再投与時の有効性及び安全性に大きな懸念は認められていない。適切な再投与の タイミングに関する知見は限られている状況ではあるが、本剤による治療後に適切な骨粗鬆症に対する 治療がなされた上で、さらに本剤による治療が再度必要と判断された患者に対して、本剤の再投与を制限する必要性は低いと考える。以上については、専門協議を踏まえて最終的に判断したい。"


→12か月終了後、12カ月間プラセボ=休薬後は初回投与なみに有効、デノスマブを12か月投与した後でも有効性、安全性は報告あり。



ビスホスホネート、テリパラチド、デノスマブとの併用

イベニティの臨床試験を見ると海外で行われた試験(BRIDGE試験、FRAME試験)、国内臨床試験ともに除外基準として「骨代謝に影響を及ぼす薬剤」となっており、基本的には何も併用していない。

イベニティ+ビスホスホネート、イベニティ+テリパラチド、イベニティ+デノスマブなど考えられそうですが、今のところエビデンスはなし。

ビスホスホネートやデノスマブの併用は低カルシウム血症のリスクは高くなりそう。

テリパラチドは・・・ビスホスホネートのように破骨を抑える薬であればテリパラチドの効果に負の影響を与えそうですが、イベニティは骨形成促進+破骨抑制なのでテリパラチドの効果をビスホスホネートのように邪魔してしまいそうな感じもあるが、データがないので不明。

ビスホスホネートとテリパラチドの併用は、ビスホスホネートの破骨細胞抑制がテリパラチドの骨代謝の回転を上げる(骨吸収も骨形成も促進すること)のを抑制してしまうため、負の影響を与える可能性が示唆されており、併用の有効性も微妙(こちらの記事

→現状併用されている試験データがないため有効性・安全性不明

※作用機序の比較

ビスホスホネート:破骨細胞の抑制=骨吸収抑制
テリパラチド:破骨細胞、骨芽細胞どちらも活性化→骨吸収・骨形成どちらも促進→骨形成>骨吸収となるため最終的には骨形成促進
デノスマブ:抗RANKL作用により破骨細胞の形成抑制=骨吸収抑制
イベニティ:抗スクレロスチン作用により破骨細胞抑制、骨芽細胞活性化=骨吸収抑制、骨形成促進

スクレロスチンは骨細胞から分泌される物質で、骨芽細胞の抑制と破骨細胞の活性化に関与している。



まとめ

イベニティ12ヶ月投与後、
・12カ月間休薬後に再投与した場合、初回投与並みの有効性
・12カ月間デノスマブ投与後に再投与した場合、初回よりは落ちるものの有効性はみられている
安全性も問題なしだが、今後のさらなるエビデンス待ち

イベニティと他剤の併用エビデンスはなし。
承認時臨床試験では骨代謝に影響を及ぼす薬剤を服用している患者は除外されている。


 2019年8月10日

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