支払基金で不可とされたPPI抵抗性、難治性逆流性食道炎に対するPPIとH2ブロッカーの有効性は?
”取扱い
H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(PPI)(オメプラール錠等)との併用投与は、原則として認めない。
取扱いを作成した根拠等
H2ブロッカー(ガスター錠等)は、添付文書上の適応が、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」となっている。 プロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」となっている。 胃や十二指腸の潰瘍は、胃酸分泌を抑えることで改善へ向かうものであり、胃酸の分泌には、ヒスタミンが胃にある壁細胞に刺激を与え、プロトンポンプから塩酸が出る仕組みとなっている。 H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は同効の薬剤であり、それぞれが単独使用で所期の効果は期待できる。 PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎については、PPIの弱点である夜間の効果減弱すなわちnocturnal gastric acid breakthrough(NAB)に対して、速効性のあるH2ブロッカー投与が効果的であるとの報告はあるが、その効果は1週間程度で長期投与では効果が減弱するとの報告もあり、併用による効果について一定の見解は得られていない。PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎に対しては、まずPPIの倍量あるいは1日2回投与が強く推奨されている。(胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015) さらに、2015年2月に薬価収載された新しい作用機序を持ったPPI、ボノプラザン(タケキャブ)は胃酸で失活しない、速効性のPPIである。この新規PPIの登場により、今後、PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎の治療方針が変更される可能性が高いと思われる。 したがって、H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)の併用投与は、原則認められないと判断した。”
前半の赤字は確かにガイドラインに記載がある。
しかし、併用を有効とする報告もある。
後半はタケキャブが出たからそっちになるでしょうとのこと。
たしかに治療抵抗性逆流性食道炎に対してはタケキャブが有効とする報告がある。
現時点でのガイドラインの併用に関する記載を見てみます。
H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(PPI)(オメプラール錠等)との併用投与は、原則として認めない。
取扱いを作成した根拠等
H2ブロッカー(ガスター錠等)は、添付文書上の適応が、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」となっている。 プロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」となっている。 胃や十二指腸の潰瘍は、胃酸分泌を抑えることで改善へ向かうものであり、胃酸の分泌には、ヒスタミンが胃にある壁細胞に刺激を与え、プロトンポンプから塩酸が出る仕組みとなっている。 H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は同効の薬剤であり、それぞれが単独使用で所期の効果は期待できる。 PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎については、PPIの弱点である夜間の効果減弱すなわちnocturnal gastric acid breakthrough(NAB)に対して、速効性のあるH2ブロッカー投与が効果的であるとの報告はあるが、その効果は1週間程度で長期投与では効果が減弱するとの報告もあり、併用による効果について一定の見解は得られていない。PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎に対しては、まずPPIの倍量あるいは1日2回投与が強く推奨されている。(胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015) さらに、2015年2月に薬価収載された新しい作用機序を持ったPPI、ボノプラザン(タケキャブ)は胃酸で失活しない、速効性のPPIである。この新規PPIの登場により、今後、PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎の治療方針が変更される可能性が高いと思われる。 したがって、H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)の併用投与は、原則認められないと判断した。”
前半の赤字は確かにガイドラインに記載がある。
しかし、併用を有効とする報告もある。
後半はタケキャブが出たからそっちになるでしょうとのこと。
たしかに治療抵抗性逆流性食道炎に対してはタケキャブが有効とする報告がある。
現時点でのガイドラインの併用に関する記載を見てみます。
PPIとH2ブロッカーの併用について
基本は支払基金に記載されているように、PPIの分2、倍量が有効とされている。
ただし、H2ブロッカーの併用は提案として挙がっている。
"就寝前のH2RA の追加投与は,nocturnal gastric acid breakthrough(NAB)の抑制効果があることが明らかになっているが,これがGERD患者の症状改善やQOL改善に寄与するか否かは十分に検討されていない.この方法により,長期に症状のコントロールが可能であったとする報告がみられる一方,H2RAの夜間分泌に対する耐性は1週間程度で発現するため,長期投与ではNAB 抑制の効果が減弱することも指摘されている.PPIとH2RA の同時併用投与が保険診療上認められるか否かについては,個々の症例においての各都道府県の国民健康保険あるいは社会保険支払い基金の判断にゆだねられているのが現状である."
NABとはPPIを投与していてもpH4以上になる時間が1時間以上ある状態。
PPI抵抗性GERDを引き起こす原因の一つと考えられている。
このような場合にH2ブロッカーの併用がNABを改善することは報告されているようですが、それで症状が改善するのかは不明。
そして長期的の有効性については結果が一致していない。
支払は各都道府県にゆだねられているとの記載だが、ガイドラインが2015年なので社保の通知のほうが新しい。
そのうちガイドラインも改訂されますかね。(国保は知りませんが)
PPI倍量、分2、タケキャブを試みて、それでもだめならやってみる価値はありそうですが・・・
NABとはPPIを投与していてもpH4以上になる時間が1時間以上ある状態。
PPI抵抗性GERDを引き起こす原因の一つと考えられている。
このような場合にH2ブロッカーの併用がNABを改善することは報告されているようですが、それで症状が改善するのかは不明。
そして長期的の有効性については結果が一致していない。
支払は各都道府県にゆだねられているとの記載だが、ガイドラインが2015年なので社保の通知のほうが新しい。
そのうちガイドラインも改訂されますかね。(国保は知りませんが)
PPI倍量、分2、タケキャブを試みて、それでもだめならやってみる価値はありそうですが・・・
まとめ
社保は支払を認めていない
有効性は一致した報告なし
H2併用の前にPPIの分2、倍量、タケキャブへの切り替えを考慮