バイアスピリン、シロスタゾール、クロピトグレルの脳梗塞2次予防効果比較

脳梗塞の2次予防の第一選択薬となっているバイアスピリン、シロスタゾール、クロピトグレルの比較 使い分けは?


脳梗塞の2次予防(再発予防)に上記抗血小板は必須となっており、ガイドラインにおいてもグレードAとなっている。

脳梗塞ガイドライン2015 追補2017

3-2 再発予防のための抗血小板療法
(1)非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など)

1.非心原性脳梗塞の再発予防には、抗凝固薬よりも抗血小板薬の投与を行うよう強く勧められる。(グレードA)

2.現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上、最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なもの)はシロスタゾール200㎎/日、クロピトグレル75㎎/日、アスピリン75-150mg/日(グレードA)、チクロピジン200㎎/日(グレードB )である。

3.ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が進められる。(グレードB)。ただし、十分な血圧のコントロールを行う必要がある。

以下略

※チクロピジンはクロピトグレルより肝機能障害が2倍、容認性が低いためわざわざ使われることは少ない。
※アスピリン+シロスタゾールorクロピトグレルの併用は、再発を有意に抑制したとする報告もあるが、1年以上での有効性は不明、出血リスクは増加するため推奨されない。


では、この3種類の使い分けはどのようにされるのでしょうか。

各薬剤のエビデンス

有効性の比較

アスピリンVSクロピトグレル(心血管イベント抑制:ATT)
1994年のATT(287件のRCTに登録された約20万症例を解析)の報告では、クロピトグレルの抑制率がアスピリンより10%優れていたが、有意差はなし

2009年に発表されたコクランレビューによるとチエノピリジン(チクロピジとクロピトグレル)はアスピリンと比較して心血管イベントを6%抑制、脳卒中を10%したが有意差はなし脳梗塞は15%抑制し、有意差あり


アスピリンVSクロピトグレル(CAPRIE試験)
脳梗塞発症後1週間~6ヶ月or心筋梗塞oe動脈硬化性抹消血管疾患を有する19185例を対象としたRCTで、脳梗塞・心筋梗塞・血管死の発症はクロピトグレル群で5.32%、アスピリン群で5.83%となり、相対リスクは8.7%減少で有意差ありとなってる。(絶対リスクは0.51でNNT=196、)

脳梗塞の既往例のみについて解析すると、脳卒中、心筋梗塞、血管死は7.3%減少したが有意差はなし

ハイリスク群(高脂血症、糖尿病等)においてはクロピトグレル群が優位。


アスピリンVSシロスタゾール(コクランレビュー)
CASISP試験とCSPS2試験を合わせた3477例のメタ解析において、シロスタゾールはアスピリンと比べ有意に心血管イベントを抑制(相対リスク0.72 95%CI:0.57-0.91)。


アスピリンVSシロスタゾール(CSPⅡ試験)
シロスタゾールはアスピリンより脳卒中を有意に抑制(相対リスク25.7%)


NNTの比較
アスピリン、クロピトグレルのNNTは3年の観察期間で26~28
シロスタゾールのNNTは3年の観察期間で18.7



まとめると・・・
アスピリンよりクロピトグレル、シロスタゾールのほうが有効とする結果が多い。



副作用の比較

アスピリンVSシロスタゾール(CASISP試験)

アスピリンとシロスタゾールの2重盲検比較試験において、頭蓋内出血の発症はアスピリンで7/359人、シロスタゾールで1/360人となっており、アスピリン群で有意に発症率が高かった。


アスピリンVSシロスタゾール(コクランレビュー)
上記のCASISP試験とCSPS2試験を合わせたメタ解析において、出血性脳卒中はシロスタゾール群で有意に少なかった。(相対リスク0.26)

頻脈、頭痛などの軽微な副作用はシロスタゾール群で優位に多かった(相対リスク1.66)が、狭心症や心不全の発症率は同程度であった。


アスピリンVSクロピトグレル(コクランレビュー)
コクランレビューにおいて、アスピリンとチエノピリジン系の出血性脳卒中のリスクは有意差なし。出血性副作用はアスピリンで有意に多く、皮疹はチエノピリジンで有意に多かった。好中球減少はクロピトグレルとアスピリンで有意差なし。


アスピリンVSクロピトグレル(CAPRIE試験)
クロピトグレルはアスピリンより消化管出血が少ないが、下痢、発疹が多かったがすべてにおいて有意差はなし。(消化管出血:0.49%vs0.71%、下痢:4.46%vs3.36%、発疹:6.0%vs4.6%)


アスピリンの消化器系への影響(MAGIC試験)
アスピリンにおいて、投与期間平均4.6年で29.2%に胃・十二指腸にびらん、6.5%に潰瘍病変がみられたとのこと。
(PPIの服用で有意に抑制可能)



まとめると・・・
アスピリン:出血リスク、消化管副作用が多い(PPIで対応)
クロピトグレル:皮疹が多い 好中球減少の発症は有意差なし
シロスタゾール:頻脈、頭痛が多い 狭心症は有意差なし

クロピトグレルといえば無顆粒球症、シロスタゾールといえば狭心症ですが、臨床試験場は有意差をもって多くなるわけではないのですね。


その他

クロピトグレルはCYP2C19により活性化されるため遺伝子多型(PMで有効性低下)により有効性が差が出る。


まとめ

ガイドラインの推奨グレードは同等だが、元になっている試験を見るとクロピトグレル、シロスタゾールのほうが有効性とする結果が多い。

出血リスクはアスピリンで多いとする結果。
クロピトグレルの無顆粒球症、シロスタゾールの狭心症・心不全は臨床試験においてはアスピリンと差はなし。

 2019年7月21日

関連記事