逆流性食道炎の再発率

PPIによる維持療法を行わない場合の逆流性食道炎の再発率は?

逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症、びらん性GERD)は再発率が高いと言われており、内視鏡的に重度のGERDに対して維持療法を行わない場合再発はほぼ確実とされている。※1

では、重度でない場合はどうなんでしょうか。
ロサンゼルス分類A,BのGARDに対して、オメプラゾール20㎎によるオンデマンド療法(症状があるときに週2-4回服用)はオメプラゾール10㎎の継続投与より再発率が高かったとの報告がある(34.9% VS 15.3%)※1
ただし、QOLに差はなかったとされている。

※ロサンゼルス分類は内視鏡でびらんを確認する。A~Dに分類され、Dが最も重症。C,Dに分類されるのは3%程度との報告あり。
自覚症状と相関があるとの報告もあるが、合致しない場合もある。


ということで、オンデマンド療法ですら再発率が高いので、PPIによる維持療法をしていないと再発率はもっと高くなることが推測されるがどの程度なんでしょうか。
PPIをやめることができるのはどのような状況の時でしょうか。


PPI服用と無治療の再発率比較

"gerd,recurrence,rate"で検索したところ54件ヒット。
合致しそうなもの2件見つけたのでメモ。

文献①Esomeprazole once daily for 6 months is effective therapy for maintaining healed erosive esophagitis and for controlling gastroesophageal reflux disease symptoms: a randomized, double-blind, placebo-controlled study of efficacy and safety.※2
逆流性食道炎に対するエソメプラゾール(40,20,10mg)とプラセボの維持療法の有効性についての試験。

無料じゃなので全て見れず重症度まではみられていないですが、

2重盲検比較試験、318名、6か月間における治癒維持率
エソメプラゾール40㎎群:93.6% (95% CI 87.4-99.7)
エソメプラゾール20㎎群:93.2% (95% CI 87.4-99.0)
エソメプラゾール10㎎群:57.1% (95% CI 45.2-69)
       プラセボ群:29.1%; 95% CI 17.7-40.3

となっており、無治療だと7割近くが再発、10㎎でも4割が再発してしまっていることになる。


再発した患者のうち、食道炎の最初の再発までの平均時間は、
プラセボ群:34日(プラセボ)
10㎎群:78日
20㎎群:115日
40㎎群:163日

となっており、再発までの時間も用量に依存して良好となっている。




文献②Rabeprazole for the prevention of recurrent erosive or ulcerative gastro-oesophageal reflux disease. Rabeprazole Study Group.※3
逆流性食道炎または潰瘍性胃食道逆流症と診断された患者に対するラベプラゾール(20㎎,10㎎ 朝投与)とプラセボの比較試験。診断は内視鏡にて。

2重盲検比較試験、288名、52週間(1年)における累積再発率は、
ラベプラゾール20㎎群:14%
ラベプラゾール10㎎群:23%
                プラセボ群:71%

となっており、自覚症状についてもラベプラゾール群で優位に改善していたとのこと。


どちらの試験も無治療で7割程度の再発となっている。


まとめ

PPIによる維持療法を行わないと
・重度の逆流性食道炎の場合、ほぼ再発する。(ガイドライン上の記載)
・PPI服用で9割近く再発抑制できているものが、無治療だと7割近くが再発してしまう。

※1 胃食道逆流症診療ガイドライン2015
※2 Am J Gastroenterol. 2001 Jan;96(1):27-34.
※3 Eur J Gastroenterol Hepatol. 2000 Aug;12(8):889-97. 
 2019年7月11日

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