中耳炎の治療と予防 おしゃぶりはリスク? 鼻吸引は有効?

中耳炎の治療方法と予防方法 おしゃぶりを使っていると中耳炎を発症しやすくなるか?

急性中耳炎は幼小児期に最も頻回に罹患する疾患の一つであり,生後6か月までに 47.8%、 1歳までに 78.9%、2歳までに 91.1%の児が1回は中耳炎にかかるとされている。※2

肺炎球菌ワクチンはある程度予防効果があるとされているが、上記の罹患率の通り、十分な予防効果があるとは言えない。(予防効果は10%前後、肺炎球菌に限れば33-41%、重症化予防効果はあり※1)

中耳炎になった場合は基本抗生剤の治療となるが、そのほかリスク回避方法はないのでしょうか。


小児急性中耳炎の原因菌※1

ガイドラインでは、急性中耳炎患者から195株の細菌を分離したところ、
肺炎球菌29. 2%
インフルエンザ菌26. 7%
モラクセラ・カタラーリス11. 3%
であり,この3 菌種で70%近くを占めていた。

※15歳以下では、肺炎球菌31. 2%,インフルエンザ菌32. 5%,モラクセラ・カタラーリスが12. 3%。

抗生剤の感受性※1

肺炎球菌:2001年から2012年まで2歳以下のから分離された耐性肺炎球菌において、ペニシリン耐性菌(PRSP)は2010年43.4%,2011年 27.5%,2012年14.3 %と減少傾向。
→基本はペニシリン系で治療

インフルエンザ菌: BLNAS(感受性菌)が34.0 %, BLNAI(中等度耐性)15.1%,BLNAR(クラブラン酸配合にも耐性)35.8%,BLPAR(耐性菌)10. 3%,BLPACR(クラブラン酸配合にも耐性)4. 7%(全年齢)
※2歳未満では71.4%で耐性菌分離の報告もあり。


中耳炎のリスクとなる因子

ガイドライン2015には反復性中耳炎のリスクとなる生活像として、人工乳、兄弟あり、保育園児、おしゃぶりの使用、受動喫煙がリスクとして挙げられている。

ランダム化比較試験において、おしゃぶり非使用群は使用群と比べて急性中耳炎の発症が39%低下がみられており、おしゃぶりは急性中耳炎及び呼吸器疾患の危険因子であるとの報告されている。※3

ただ、この項目が2018年ガイドラインではなくなっている。
削除された理由等は見つからないので詳細不明。


一般的な治療

ガイドライン上の薬物治療方針は以下の通り

抗生剤による治療

軽症例で経過を厳格に追える場合は、抗生剤を投与しないという選択肢もあるが、基本は抗生剤による治療となる。

風邪(上気道炎)に抗生剤は不要 というのが普通ですが、ウイルス性は軽症で自然軽快するものがほとんどとのこと。急性中耳炎の所見を示す場合、上気道炎後の細菌による中耳炎が多く、ウイルス性中耳炎のうち75%に細菌性が混在していたとの報告もある。


軽度の場合
アモキシシリン3日投与
→改善しない場合:アモキシシリン追加で3-5日
→改善しない場合:高用量アモキシシリンorアモキシシリン/クラブラン酸orセフジトレンを3-5日

中度の場合
高用量アモキシシリン3-5日
→改善しない場合:アモキシシリン/クラブラン酸orセフジトレンor高用量アモキシシリン+鼓膜切開を3-5日
→改善しない場合:アモキシシリン/クラブラン酸+鼓膜切開orセフジトレン高用量+鼓膜切開orテビペネム(オラペネム)+鼓膜切開orトスフロキサシン+鼓膜切開を3-5日

重度の場合
高用量アモキシシリン+鼓膜切開orアモキシシリン/クラブラン酸orセフジトレン高用量+鼓膜切開を3-5日
→改善しない場合:アモキシシリン/クラブラン酸+鼓膜切開orセフジトレン高用量+鼓膜切開orテビペネム(オラペネム)+鼓膜切開orトスフロキサシン+鼓膜切開を3-5日
→改善しない場合:テビペネム(オラペネム)+鼓膜切開orトスフロキサシン+鼓膜切開を3-5日

※点耳液は鼓膜換気チューブ留置などで中耳腔に薬液が十分投与・到達可能な症例への使用を推奨する。鼓膜穿孔のない症例には点耳薬は無効であり使用すべきでないとされている。
また、抗ヒスタミン薬も無効。

テビペネムは下痢の頻度が異常に高いので注意。


漢方薬

ガイドランにおいて、十全大補湯は,免疫賦活・栄養状態改善などを通して中耳 炎罹患回数の減少効果を有し,反復性中耳炎に対する使用が推奨される。 推奨の強さ:推奨 エビデンスの質:Bとなっている。

非薬物療法

鼻吸引
ガイドラン上はエビデンスD。十分なエビデンスはないが、鼻症状を合併している場合は選択肢のひとつ。イタリアのガイドラインでは推奨されている。
鼻吸引による前向き比較試験において、中耳炎の予防効果が示されている。

耳鼻科の先生に鼻吸わないと治らないよ! 頑張って! と言われまくるのですが、どうなんでしょうか・・・予防効果は示されているようですが、治療としての有効性は不明といったところでしょうか。


まとめ

中耳炎の基本治療や抗生剤 重症度に応じて選択肢が変わる。

おしゃぶりは中耳炎のリスクとの報告あり。
その他集団保育、兄弟などもリスクファクター。

鼻吸引はエビデンスレベルが低く、推奨はなし。オプションにとどまっている。

※1 小児急性中耳炎ガイドライン2018
※2 小児感染免疫 Vol. 26 No. 4 503
※3 Pediatrics. 2000 Sep;106(3):483-8.
 2019年12月27日

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