インフルエンザの潜伏期間と排菌期間

インフルエンザは発症何日前から感染力がある? 発症後はいつまで感染力がある?

ご存知の通り、インフルエンザになったら発症5日経過かつ解熱後2日(幼児は3日)過ぎるまでは出席停止となる。

これは学校保健安全法により定められている。

では、5日かつ解熱後2日経っていれば感染力がないのか?
また、発熱(発症)するどのくらい前から感染力をもってしまうのか。

厚労省のぺージには簡単にしか記載されていなかったので調べてみました。


インフルエンザの潜伏期間、排菌期間

インフルエンザや胃腸炎等の潜伏期間、排菌期間、感染期間に関する報告のシステマティックレビューがある。※1

これによると、インフルエンザに関する8つのピアレビュー及びピアレビューされていない複数の報告があり、以下のようにまとめられている。

潜伏期案:1~4日 平均2日 
感染期間:発症1日前~発症後10日
排菌期間:発症8日前~発症後15日
インフルエンザAの排菌期間:平均7日
インフルエンザBの排菌期間:平均6日(ウイルス培養)、平均4.6日(抗体検出試験)




※各用語の意味
潜伏期間:感染してから発症までの期間(場合によっては感染力を持つ期間を意味する場合も)
感染期間:感染力のある期間(infectiousness)
排菌期間:ウイルスが(検査によって)分離できる期間。 便宜上"ウイルス"を"菌"と記載しました。

ということで、発症全日から感染力があり、発症から10日間は感染力ある可能性が報告されている。(熱に関する記載がなので、解熱していない例も含まれているものと考えられる。)


※厚生局ホームページの記載
"Q.17: インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいのでしょうか?  
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。そのためにウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。  排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。

Q.21: ワクチンの効果、有効性について教えてください。  
インフルエンザにかかる時は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。  ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します・・・


もっとも感染力が強くなるのはいつ?

ウイルスを一番排出しているタイミングが最も感染力があると考えられる。

感染者のウイルス排出量を調べた研究※2によると、発症から2,3日で最大となったとのこと。

発熱も発症~2,3日続くことが多く、一般的に言われている発熱と感染力が一致するという考えで問題なさそうです。


熱とウイルス排泄量の関係

解熱後2日で出席停止解除ですが、上記報告では発症10日でも感染力が保持されている例が報告されている。

熱の記載はないので、発熱が継続している例かと思われるが、発熱と感染力の関係についても報告がないか調べてみました。

先の文献にウイルス排出量と体温の関係も記載されている。
上がウイルス量、下が体温。
一致している?と断言しにくいですが、ピークはまぁなんとなく一致しているでしょうか。

排出量と体温の関係は上記のようですが、感染力と体温の関係はうまく見つからず・・・
とりあえずはこのデータで代用。


インフルエンザにかかると何人の人にうつす?

以前感染力の指標として「基本再生産数」というものについて記載しました。(こちら)
これによると、完全な感受性集団(免疫がない集団)においては、1人の患者さんから平均2人に移ることになる。

実際は100%免疫がない集団ではないし、予防接種も受けている人が多いのでこれより低くなる。


まとめ

インフルエンザが感染力を持っているのは発症1日前~発症後10日との報告あり。
(ウイルス排出は8日前~15日後くらいまで見られる)

ただし、解熱とともにウイルス排出量が減るため通常発症5日、解熱後2日で出席停止は解除となる。

※1 BMC Infect Dis. 2018 May 2;18(1):199.
※2 Hong Kong Med J. 2013 Jun;19 Suppl 4:19-23.
※3 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html 
 2020年1月6日

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