心房細動にPCI(ステント留置)した場合の2剤併用vs3剤併用

PCI後の心房細動患者には抗血小板2剤+抗凝固薬1剤の3剤は不要?

先日PCI施行AF患者における2剤又は3剤抗血栓薬療法の比較に関するメタ解析の結果を目にした。

心房細動を合併するPCI患者は5%程度いる※1とされており、外来でも割と目にするので詳しく見てみました。


心房細動合併患者のPIC後の薬物治療に関するメタ解析※2

解析対象
4試験(WOEST,ISAR-TRIPLE,PIONEER AF-PCI,RE-DUAL PCI)。

対象患者
5,317例(2剤併用=DAT群3,039例,3剤併用=TAT群2,278例)
DAT:抗凝固1剤+抗血小板1剤
TAT:抗凝固1剤+抗血小板2剤
平均年齢:DAT群70.9歳,TAT群:71.1歳
急性冠症候群:47%,45%,非ACS: 53%,55%
薬剤溶出性ステント:79%,79%,ベアメタルステント:19%,19%
心房細動:96%,95%
CHA2DS2-VAScスコア:2点超75%,82%
HAS-BLED出血リスクスコア3点超:66%,71%

※ESC心房細動管理ガイドライン2012では、3点以上がハイリスク患者と起されている。スコア自動計算はこちら:ベーリンガーHP


結果
・平均追跡期間:9~14ヵ月

・主要評価項目
TIMI大/小出血 TIMI大/小出血:DAT群4.3%で,TAT群9.0%より少ない(HR 0.53,95%CI 0.36-0.85) ただし、やや異質度あり(I2=42.9%)

MACE(血管イベント)はDAT群10.4%で,TAT群10.0%と同程度(HR 0.85,0.48-1.29)。ただし、やや異質度あり(I2=58.4%)

副次評価項目(頭蓋内出血、全死亡、心臓死、ステント血栓、脳卒中)について,DAT群とTAT群の間に有意差なし


結論として、有効性は同程度だが3剤併用で出血リスクが高くなるということになっている。


急性冠症候群ガイドライン2018における記載

上記論文のほうが最新ですが、一応ガイドライン中の記載も抜粋。

"ステント留置後早期であれば,アスピリン,チエノピリジン系抗血小板薬による DAPT のほかに,ワルファリンや直接作用型経口 抗凝固薬(DOAC)などの抗凝固薬が必要となるため(3 剤併用療法),出血リスクと血栓塞栓リスクのバランスを考慮する必要がある.

最新のESC ガイドラインでは,3剤併用療法として虚血リスクを懸念する場合は6ヵ月,出血リスクを懸念する場合は低リスク患者で1ヵ月が,高リスク患者では初めからDOACとクロピドグレルの2剤併用療法が推奨されている

最近の2つの試験では,DOAC とクロピドグレルの2剤併用療法は,従来のワルファリン + DAPT の3剤併用療法と比較して,血栓イベントおよび 再血行再建術の確率を増加させずに,出血イベントを有意に抑制したことが報告されている.

両試験(=PIONEER AF-PCI,RE-DUAL PCI)ともACS患者が 5 割前後含まれていることから,非ACSと同様の 推奨とした.現時点では欧米と同様,出血リスクが高い心房細動を合併するACS患者では,ステント留置術直後から DOAC に加えて少なくとも 12 ヵ月間のクロピドグレル併用が推奨される.アスピリンの血小板凝集抑制作用は投与中止後 7 ~ 10 日間は持続するため,抗凝固薬の併用が必要なPCI患者に対して退院時にアスピリン投与を中止し, 抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用療法を行うことも考慮される."



上記メタ解析に含まれている臨床試験も引用されていますが、ガイドライン上は出血リスクが高い場合は2剤がよいといった記載。

メタ解析でのHAS-BLEDスコア3点以上は6,7割。
高齢者(>65)、高血圧(>160mmHg)、出血既往歴、肝腎疾患、NSAIDsや抗血小板薬の使用、アルコール依存のうち3つ該当で3点になってしまうので、該当する人は多そう。

1,2点の人がどうだったのか、その人だけを解析している結果は記載されていないようです。

まとめ

心房細動+PCI後は
2剤併用(抗凝固+抗血小板)の有効性は3剤併用(抗凝固+抗血小板2剤)と同等、出血リスクは少ない。

抗血小板についてはバイアスピリンよりクロピトグレルが推奨されている。


※1 急性冠症候群ガイドライン2018版
※2 Eur Heart J. 2018 May 14;39(19):1726-1735a.
 2020年2月22日

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