末期心不全にβ遮断は問題ないか

血圧の低下した末期心不全患者に対してもβ遮断薬(カルベジロール)は継続すべきか? ノルアドレナリンなどのカテコラミンとの併用は問題ないか?

慢性心不全へのβ遮断薬の予後改善効果は多くの報告がある。

では、末期心不全ではどうでしょうか。
心拍出量や血圧が保てないような状況でもβ遮断薬は継続するべきなのでしょうか。
また、α、β刺激薬投与時も服用継続すべきなのでしょうか。


末期心不全に対するカルベジロールの有効性


末期心不全を対象としたカルベジロールの有効性についてはCOPERNICUS試験というものがある。
NYHA III~IV度、EF25%以下という最重症の心不全患者を対象としたカルベジロールの試験として有名。
プラセボ群と比較してカルベジロール群では、死亡リスクが35%低下した。


血圧低値を対象としたこの臨床試験のサブ解析※では、β遮断薬投与群において、死亡率の改善がみられている。

しかし、このサブ解析の除外基準を見ると以下の患者が除外されいている。

適応基準
・収縮期血圧85以上、EF<25%未満
・一般的な治療(利尿剤,ACEI,ARB)が既に行われている。
・ジギタリス、スピロノラクトン、アミオダロン、血管拡張薬の有無は問わない
・安静時または軽度労作時の疲労または呼吸困難が2か月以上持続

除外基準
・α遮断薬、Ca遮断薬、クラスI抗不整脈薬を4週間以内に投与された患者
・2ヶ月以内のβ遮断薬
4日以内の静脈内陽性変力剤または血管拡張剤
・心拍数が68未満、Scr>2.8 、K><3 .5="">5.2 、Scr>の増加、
・3〜14日以内の体重1.5kg以上の変化
末期心不全でドブタミンやノルアドレナリンなどを投与している患者は除外されてしまぅっている。 にβ刺激、α刺激投与下でカルベジロール(α、β遮断)が有効かどうかはこの試験から不明。 COPERNICUS試験でも同様に除外されている。


ドブタミンとカルベジロールの併用について

ガイドライン※2を見ると以下の記載がある。

"4.4.1
a. ドブタミン 
ドブタミンは合成カテコラミン薬であり,β1,β2,α1受容体刺激作用を有する.血管平滑筋に対するα1とβ2作用が相殺され,β1受容体刺激作用を発揮する.
β2受容体刺激作用 については,5 μg/kg/分以下の低用量では軽度の血管拡張作用による全身末梢血管抵抗低下および肺毛細管圧の低下をもたらす.また,10μg/kg/分以下では心拍数の上昇も軽 度であり,他のカテコラミン薬にくらべ心筋酸素消費量の増加も少なく,虚血性心疾患にも使用しやすい.
わが国ではドパミン,ドブタミンの開発当初に急性心筋伷塞に伴う心ポンプ失調患者を対象に多施設共同ランダム化およびクロスオーバー比較試験が行われ,ドブタミンはドパミンにくらべ肺動脈拡張期圧を低下し,肺うっ血の軽減にも有効 であることが示されている.しかし,血圧維持が不十分の場合にはドパミンまたはノルアドレナリンとの併用の検 討が必要である.なお,カルベジロール内服中の患者に対 して用いた場合には,心拍出量増加効果が減弱し,血行動態に与える影響が変化している可能性が報告されており, 注意が必要である.また,ドブタミン投与により心筋および血中の好酸球が増加することがある. 中止に際しては,急激な減量や中止は血行動態の悪化をもたらすため, 段階的な減量が必要である.ドブタミン投与による長期予後への影響については,FIRST試験のサブ解析によって心事故発生率を高める可能性が示されており,必要最少量および最短期間での使用にとどめるのが望ましい"

"4.4.3
PDEⅢ阻害薬
~中略~ β遮断薬が投与されている慢性心不全の急性増悪では, 交感神経受容体がブロックされているので,ドパミンやドブタミンなどの強心効果は制限される.一方,β受容体を 介さないPDE阻害薬やコルホルシンダロパートなどのアデ ニル酸シクラーゼ賦活薬は,優れた心拍出量増加と肺毛細 管圧低下作用を発揮する"


ドブタミンの新初出量増加効果が減弱する可能性があるようです。
末期で心拍出量がドブタミンでも上がっていない場合、β遮断薬を中止するのも選択肢の1つになるでしょうか。


まとめ

末期心不全にもβ遮断薬は死亡率、再入院、心不全悪化予防効果の報告あり

ただし、カテコラミンが投与されているような患者は除外されている

ドブタミンとカルベジロールの併用により、心拍出量の減弱報告あり


※1 J Am Coll Cardiol. 2004 Apr 21;43(8):1423-9.
※2 急性・慢性心不全ガイドライン2017

 2020年4月19日

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