末梢静脈栄養について

末梢静脈栄養の概要

ガイドラインの推奨事項

Q1 末梢静脈栄養輸液製剤の基本組成と選択基準は?

1.1 アミノ酸を含む糖電解質液を基本とし、ビタミン製剤を加える。脂肪乳剤は別途投与する。【AⅡ】
1.2 浸透圧、pH、滴定酸度を確認して輸液剤を選択する。【AⅡ】
1.3 浸透圧比3以下の、pHが中性に近い、滴定酸度はできるだけ小さい値の製剤を選択する【AⅡ】

浸透圧比:最大3(800-1000mOsm)

ビタミンB1は糖代謝で消費するため投与すべき。
現在、米国食品医薬品局(FDA)の静脈栄養時のビタミンB1推奨投与量は6mgに増量されている。
日本のガイドラインでは3㎎/日。



Q3 末梢静脈栄養施行時に脂肪乳剤を併用する利点は? 

3.1 脂肪乳剤はエネルギー密度が高いため、投与エネルギー量を増加させる うえで有利である。【BⅢ】
3.2 PPN製剤と脂肪乳剤を同時に投与することにより浸透圧を下げることが できるため、血栓性静脈炎の予防に有用である。【BⅢ】
3.3 PPN製剤はNPC/N比が低いので、NPC/N比を適正に保つためには脂肪乳剤の併用が有用である。【AⅢ】

脂肪乳剤で静脈炎予防

脂肪乳剤はミセル化された脂肪酸とグリセリンから成る。10%製剤で1.1kcal/mL、 20%製剤で2.0kcal/mLと非常にエネルギー密度が高く、かつ低浸透圧の輸液製剤で あるため、末梢から十分なエネルギー量を投与し、NPC/N比を適正にして投与する ためには有用である21。さらに、浸透圧が高い糖電解質液やアミノ酸加糖電解質液と 同時に投与すれば浸透圧を下げることができ、静脈炎の予防にも有用である。

脂肪乳剤を投与すべきPPN適応患者は?

添付文書上、アミノ酸加糖電解質液(ビタミンB1含有アミノ酸加糖電解質液も含む) の単独投与は、経口摂取不十分で、軽度の低タンパク血症または軽度の低栄養状態に ある場合や手術前後に3 ~ 5日間の短期間投与とする、とされており、速やかに経口 あるいは経腸栄養に移行することを前提としている。これは、非タンパク熱量として 150kcal/500mLを含有しているが、本製剤だけでは1日必要量のエネルギー補給は 行えないためである。したがって、PPNとして5日を超えて投与する場合にはNPC/ N比の適正化と投与エネルギー量の補充のために脂肪乳剤との併用が有用である。


Q25 末梢静脈カテーテルの留置期間、輸液ライン、ドレッシング、 輸液の管理の注意点は?

25.1 末梢静脈カテーテルは96時間以上留置しない。【BⅢ】
25.2 末梢静脈カテーテルの輸液ラインは、カテーテル入れ換え時に交換する。【BⅢ】
25.3 末梢静脈カテーテル挿入部はフィルム型ドレッシングで被覆し、発赤や疼痛・腫脹の有無を毎日観察する。 【BⅢ】
25.4 アミノ酸加糖電解質製剤を投与する場合は、可能な限り薬剤混合・側注を避けるなどの厳密な衛生管理を実施する。【AⅢ】



末梢輸液製剤の感染症について

投与速度と細菌増殖(ビーフリード輸液)

ビーフリードは添付文書上、250ml/h(高齢者、重篤な篤な患者には更に緩徐)投与とされている。

なので、ゆっくりである分には問題ないかと考えてしまうが、投与6時間で細菌(セレウス菌)の増殖がみらえれるとのの報告があり施設によっては投与速度を決めているところがある。(8時間以内、12時間以内など様々)※1
(イントラリポスも同様)

投与速度のほか、リスクを減らす方法として、混注しない、クローズドシステムで投与、フィルター付きのライン(ただしフィルターでは防げないとの報告もあるよう)を使用するなどがある。

エネフリード輸液について

脂肪乳剤を含有する抹消輸液製剤。

組成

1100ml中:脂質20g、ブドウ糖75g、アミノ酸30g カロリー620kcal

投与速度

添付文書上は550mlを2時間。
脂肪含有のため、ビーフリード、イントラリポス同様に投与速度が遅すぎると感染リスクが増加すると思われるが、データはなし。

pH6以上で細菌増殖リスクは上昇するといわれており、エネフリードも混合後のpH6.4であり、十分にリスクは上昇しそう。(ビーフリードはpH6.8)


※エネフリード投与時のライン管理については以下メーカーサイト参照

カテーテル感染の主な原因菌

グラム陽性菌:セレウス菌、腸球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌
グラム陰性菌:SPACE=セラチア、緑膿菌、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター

発生割合が多いのは、
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌がここ)>黄色ブドウ球菌>カンジダ>腸球菌>大腸菌 ※2

黄色ブドウ球菌、カンジダ(特にビオチン)は増殖にビタミンが必要
カンジダはpHに関係なく増殖


消毒液の選択

中心静脈カテーテルを挿入する時の皮膚消毒に使用する消毒薬の第一選択はクロルヘキシジン。
ポピドンヨードよりクロルヘキシジンのほうがCRBSI発症が少なかったとする報告が多数あり、ポピドンヨードは第2選択。


参考文献
※1 IRYO Vol.75 No. 3(207-212)2021
※2 Clinical Infectious Diseases,39(3) 309–317, 2004
 2020年4月22日

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