SGLT2阻害薬の水分摂取量の目安

SGLT2阻害薬服用時にこまめな水分摂取を勧めるが、どのくらい摂ればよい? 尿量はどの程度増える?

SGLT2は尿から糖を排泄させる。
この時一緒に水分も持っていかれるので、脱水予防のために普段より多めに水分摂取をするように説明しますが、どの程度多く飲めばいいのでしょうか。

資料によって若干異なるのでまとめてみました。

SGLT2による尿増加量

①カナグルによる尿量増加量

SGLT2によりどのくらい尿量が増えるかがわかればその分水分摂取すればよいのではないかという考え。

ベーリンガーの資材(こちら)にはSGLT2により初日は1L程度の尿量増加がみられると記載されている。

元の文献※1を見てみると、薬剤はカナグリフロジン(カナグル)であり、尿量は1日目にやたら増えているが、1Lとまではいかない。そして2日目以降はそうでもない。
そして、尿量と尿量増加に関係しそうな因子(糖、Na,Kなど)との相関(重回帰分析)を調べたところ、初日に関しては尿量増加に関して、ナトリウムの排泄量と相関があった。

唯一、連日一貫して相関しているのは水分摂取量・・・当たり前ですね・・・。

括弧書きで(12)となっているのは、1人異常に水分摂取量が多い人がいたようで、その人を省いた場合。
この場合、1日目は362.9 mL (95% CI: 71.6–654.2 mL)の尿量増加がみられているとのこと。

入院下でやっているので尿量の測定等は正確そう。


②フォシーガの尿量増加量

こちらの文献※2では、フォシーガに(ダパグリフロジン)より12-24週間にわたり、尿量が200-400ml増加したとのこと。

※エキスパートオピニオンとして、他の文献からさらに引っ張ってきているようですが、その文献は無料ではないので見ていないです。


③テベルザ/アプルウェイの尿量増加量

トホグリフロジンでは、36例を対象として前後比較を行ったところ、トホグリフロジン投与前後における尿量は,投与前1298±241 mL/日から投与後1889±437 mL/日へと増加し,投与前後において有意差が認められたとのこと。※3(約600ml増加)

投与後7-10日目の尿量にて測定。
ただし、SGLT2投与前後の水分摂取状況について記載がなく、SGLT2で増えたのか、SGLT2を服用するから水分摂取も増えたからなのか不明。



水分摂取量の目安

上記をもとにすると、だいたい500ml/日くらい飲めばいいでしょうか。

ただし、水分摂取で尿量が増加しているような報告も多いので何とも言えない。

少なくとも喉が渇いたり、口が渇いているようであれば脱水の兆候であるため水分摂取をすべきと思われる。

①では特に初期に尿量増加がみられているため、飲み始めは要注意。


まとめ

尿量増加から考えると、1日500ml程度水分を余分にとったほうがよさそう。

ただし、尿量増加がSGLT2によるものなのか、水分摂取を心掛けたためのものなのか判断がつかない報告もある。

脱水の症状に気を付けつつ、症状がある場合は水分摂取を確実に。


※1 Adv Ther. 2017; 34(2): 436–451.
※2 Clin Pharmacol Ther . 2009 May;85(5):513-9.
※3 診療と新薬 2017; 54: 25-28 
 2020年7月31日

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