DAPT時の潰瘍予防にはPPIとP-CAB(タケキャブ)どちらが有効か

 抗血小板薬2剤併用(DAPT)中の潰瘍予防にPPIとP-CABどちらが有効か?


抗血小板薬二剤併用療法(DAPT)を必要とする冠動脈疾患患者では,低用量aspirin投与下であっても適切に患者を選択し,プロトンポンプ阻害薬(PPI)による消化管保護を実施すべきとされている。※1

ただ、こちらの試験はDAPTが12か月以上必要な患者となっている。
最近は血栓低リスクでは1~3カ月、高リスクでも12か月以内なので、そのまま適応するのは微妙なのかもしれませんが・・・

また、最近はP-CABも処方されておりますが、どちらのほうがいいのでしょうか。


DAPTに対するPPIの有効性

まずはとりあえずPPIから。
適応は低用量アスピリンに対する再発予防ですが、※1文献では再発に限らず行われている。
むしろ潰瘍の既往歴がある患者は両群とも4%程度。

DAPTはアスピリン+クロピトグレル(アスピリンは用量様々)
PPIはオメプラゾール20㎎を使用

結果、PPI服用群で消化管出血イベント1.1%、PPI無し群で2.9%。(ハザード比:0.34 95%CI:0.18~0.63)

心血管イベントへの影響はなし。下痢はPPIで有意に多かった。

なので、再発に限らず消化管出血を予防できそう。

しかもクロピトグレルに対してあえてのオメプラゾール。
もともとオメプラゾールとクロピトグレルの合剤を開発しようとして行われた試験とのこと。心血管イベントも差がなかったので、オメプラゾールのCYP阻害がクロピトグレルの作用には影響しないことも示唆している。


DAPT時のPPI vs P-CAB

ランソプラゾール vs タケキャブ 第3相試験の結果

タケキャブの低用量アスピリンの有効性・安全性比較のための第3相試験では、ランソプラゾール15㎎とタケキャブ10㎎、20㎎が比較されている。※2

このうち、40%が他の抗血小板薬または抗凝固薬が服用されており、薬剤としてはクロピトグレル、ワーファリン、チカグレロル、その他となっている。

結果、アスピリン+抗凝固薬/抗血小板薬の患者においてもタケキャブとランソプラゾールで有効性に差はなし。(あくまでサブ解析ですが)


タケキャブとPPIのビックデータを用いたコホート研究

DPCデータを用いた解析。※3

対象:虚血性心疾患で抗血小板薬/抗凝固薬の2剤以上併用(DAPT以外も含む)が開始された患者で、ボノプラザンが併用されている群(2226例)とPPIが併用されている群(14189例)に分けて比較
除外:過去1年以内に抗血小板薬服用、6か月未満の治療、
デザイン:コホート研究 患者背景はIPTW法で調整
アウトカム:6か月間の上部消化管出血発症率
結果:ボノプラザンで3.14% (70/2226) 、PPIで4.17% (591/14,189) 調整ハザード比 0.84、95%CI: 0.65–1.07 でボノプラザンはPPIに非劣勢。有意差はなし。


DAPT患者に限定したサブグループ解析でも2群間で有意差はなし。

ボノプラザンのほうが低い傾向がありましたが、あくまで非劣勢。有意差はなし。


まとめ

現状、DAPT時の消化管出血予防として、タケキャブがPPIより優れているとする報告はなし


※1 N Engl J Med . 2010 Nov 11;363(20):1909-17.
※2 Gut . 2018 Jun;67(6):1033-1041.  
※3 J Cardiol . 2020 Jul;76(1):51-57. 
 2020年12月12日

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