フロセミドで腎機能は低下するか

 フロセミドにより腎機能は低下する? 症状改善のために継続するほうが利益はある?

高度腎障害患者に対しても利尿作用の強いフロセミドなどのループ利尿薬は「利尿目的」で処方される。
透析を開始しても残存機能があればフロセミドは投与される。

心不全であれば浮腫改善、末期腎不全に対しては利尿効果が得られれば尿毒素を排泄でき、自覚症状の改善にはなる。

心不全の急性期に大量ループ利尿薬で急性腎不全のリスクになるといった報告がありますが、CKD患者に慢性的にループ利尿薬を投与することは腎機能に対してどうなんでしょうか。

腎機能低下患者にループ利尿薬を使用すると、「利尿→脱水→腎血流量低下→腎機能悪化」となる場合もあり、投与によりeGFRが低下するとの報告もある(心不全患者へフロセミドを投与した場合を対象としているようですが)。※1

ただ、ACE/ARBの併用やフロセミドの血中濃度維持により腎血流量の低下を抑制できそうな話もある。※2

浮腫で、毒素たまって、自覚症状で辛いよりは、どちらにせよ腎機能は少しずつ低下してしまうし、利尿効果がでるまで増量し、そのまま継続して使っている患者をよく見ますが、果たしてどっちがいいのでしょうか。

関係していようなものをピックアップ。

エビデンスに基づくCKDガイドライン2018(日本腎臓学会)

糖尿病性腎臓病(DKD)に対するループ利尿薬のQAが同ガイドラインにある。

Q:浮腫を伴うDKD患者にループ利尿薬の投与は推奨されるか?
A:体液過剰が示唆される場合にループ利尿薬は推奨される。ただし、RA系阻害薬やNSAIDsなどの併用薬や過剰投与により腎機能が悪化するリスクがあり、投与中は慎重に経過観察する必要がある ” 推奨はD2

注意点として、
・高血圧患者においてRA系降圧薬との併用で腎機能が低下するとの報告あり
・NSAIDsとの併用によりAKI(急性腎不全)のリスクが増加するとの報告あり

となっている。
さっきACE/ARB投与したほうが腎血流保てると書いてあったのと正反対・・・

フロセミド継続使用で腎機能がどうなっていくのかは触れられていませんが、浮腫に対しては、慎重に経過観察しながらの「使用」を推奨している。




また、以前記事にまとめましたが(こちら:CKD患者の降圧療法)、CKD患者の降圧薬の選択について、体液貯留があり、75歳未満でeGFR<30であるとループ利尿薬が第1or第2選択に入ってくる。

ただ、明確なエビデンスは記載がなく、CKD患者にループ利尿薬を使う場合は腎機能低下に注意しましょう、とだけ書いてある。

現状、十分なエビデンスがないよう。

(血圧コントロールにより腎機能低下を防げることはメタ解析で報告あり。※3)



CKD患者において、ループ利尿剤投与群と非投与群の、長期間の腎機能変化を見ればなんとなくどうなのかはわかりそうですが、そのような報告は見つけられませんでした。


まとめ

CKDでループ利尿薬を継続投与する場合、しない場合と比較してその後の腎機能にどのような影響がでるかは不明。

CKD患者において、血圧管理は腎機能低下を防ぐとのメタ解析がある≒ループ利尿薬を使って血圧管理できていればそのほうがよさそう


※1 Cleve Clin J Med . 2006 Jun;73 Suppl 2:S8-13
※2心臓 Vol.46 No.9(2014)【https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/46/9/46_1207/_pdf/-char/ja】
※3. Ann Intern Med 2003; 139 (4): 244― 252.
 2020年12月8日

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