ツイミーグとメトホルミンの比較

 ツイミーグ(イメグリミン)とメトホルミンの違いは? 注意点や副作用頻度について 

新規作用機序のツイミーグ(成分名:イメグリミン)が2021.6.23承認されました。

メトホルミンと作用機序が被る部分もあるようですが、全く同じではなく、メトホルミンとの併用も可能となっている。

承認は日本が初の医薬品のようで、どのようか薬なのか簡単にまとめ。

基本情報

作用機序

イメグリミンは、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取込み能改善)により、血糖降下作用を発揮する薬剤であり、その作用機序はミトコンドリアへの作用を介するものと想定される。※1


「~想定される」と不明な点もありそうな書き方。

糖新生抑制・糖取り込みの部分はメトホルミンも同じ。
ただ、メトホルミンにはインスリン分泌促進作用はない。その代わりメトホルミンは腸からの吸収抑制がある。※2

用法用量

1日2回 1回1000㎎ 朝夕を経口投与
→用量の調整に関する記載はなし。この量一択。

腎機能患者への投与eGFR≦45(ml/min/1.72m2)(透析患者含む)は臨床試験の対象外となっており有効性は不明。血中濃度は上昇する。

血中濃度変化は以下のデータがある。
用量は承認と異なる500㎎/回でのデータ。
Cmax、AUCともにCCL<30では2倍くらいになっている。減量すれば使えそうな感じですけど、当分は腎機能障害患者へは使用しないほうがよさそう。

代謝はほとんどされず尿中未変化体と便排泄がちょうど1:1程度。

食事の影響は受けない。


有効性(HbA1c低下作用)

有効性・安全性評価のために第3相試験が3つ(TIMES1~3試験)が行われており、概要はすべてインタビューフォームに記載あり。

TIMES1試験:ツイミーグ単剤とプラセボの比較で以下の結果。※3
24週間の投与でHbA1cが-0.7程度
95%信頼区間の幅は狭くて誰にでも効いている印象。

TIMES3試験:インスリン併用時でもHbA1cが-0.6。
TIMES2試験:その他の経口剤併用時-0.5~-0.9下がっている。
(詳しくはインタビューフォーム、臨床試験の項目参照)

ただ、唯一、GLP-1製剤との併用ではあまり降下作用がみられておらず、-0.12で信頼区間も0をまたいでしまっている


副作用の発現状況について

添付文書の副作用をみると低血糖6.7%と書いてあるが、臨床試験データを見ると併用薬で大きく異なってくる。

その他の副作用(特に消化器症状)も併用薬により大きく異なるので注意。

低血糖の頻度

国内第3相試験(安全性試験)

ツイミーグ単剤:1.5%(2/134 例)
SU剤併用11.8%(15/127 例)
αグルコシダーゼ阻害剤併用:3.1%(2/64 例)
速効型インスリン分泌促進薬併用: 6.3%(4/64 例)
ビグアナイド系併用7.8%(5/64 例)
DPP-4 阻害剤併用:3.2%(2/63 例)
SGLT2 阻害剤併用: 3.2%(2/63 例)
チアゾリジン系薬剤併用:報告なし
GLP-1 受容体作動薬併用:報告なし

消化器症状の発現頻度

ツイミーグ単独:悪心 3.0% (4/134 例)、便秘 2.2%(3/134 例)
SU剤併用:便秘 3.1% (4/127 例)
速効型インスリン分泌促進薬併用:下痢 4.7%(3/64 例)
ビグアナイ ド系併用下痢 15.6%(10/64 例)、悪心 10.9%(7/64 例)、嘔吐 4.7%(3/64 例)、 上腹部痛 3.1%(2/64 例)、腹部不快感 3.1%(2/64 例)、食欲減退 3.1%(2/64 例)
α -グルコシダーゼ阻害剤併用:便秘 3.1%(2/64 例)
チアゾリジン系薬剤併用:下痢 3.1%(2/65 例)、嘔吐 3.1%(2/65 例)、糖尿病網膜症 3.1%(2/65 例)
DPP-4阻害剤併用:悪心 6.3%(4/63 例)、食欲減退 3.2%(2/63 例)
SGLT2 阻害剤併用:悪 心 3.2%(2/63 例)
GLP-1 受容体作動薬併用:悪心 4.3%(3/70 例)、嘔吐 2.9%(2/70 例)、消化不良 2.9%(2/70 例)、食欲減退 2.9%(2/70 例)


ビグアナイド系(メトホルミン)との併用により消化器症状の発生がかなり上がっている。
添付文書上でも注意喚起されているので併用時は要確認。ただ、そんなに増加していない報告もある。※4
また、低血糖もメトホルミンとの併用で割と高くなっているのが気になる。


乳酸アシドーシスについて

ビグアナイド系といえば乳酸アシドーシスですが、ツイミーグは今のところ報告なし。動物実験でも乳酸濃度の上昇はみられていないとのこと。しかし、作用機序の一部がビグアナイド系と同じであることから注意するように記載がある。

そもそもビグアナイド系で乳酸アシドーシスのリスクがあがるのは糖新生を抑制することで、糖新生に使用される乳酸が使用されなくなるから。

なので、ツイミーグも糖新生抑制作用があるので機序的には発生の可能性が考えられる。


体重減少効果は?

メトホルミンには体重減少作用が報告されておりますが、イメグリミンには今のところ報告なし。

メトホルミンに上乗せする第2相試験※4では、イメグリミン+メトホルミンはメトホルミン+プラセボと比較しても体重減少に関して有意差はなし。

まとめ

ツイミーグ(イメグリミン)は
・1日2回 1回1000㎎ の用法用量のみ。
・すべての糖尿病治療薬と併用可能。ただし、GLP-1製剤との併用では有効性がみられていない。
・メトホルミンとも併用可能。消化器症状・低血糖のリスクがけっこう上昇するため注意。
・eGFR<45の場合は有効性不明。禁忌ではない。
・メトホルミンと異なり今のところ乳酸アシドーシスの報告なし
・メトホルミンと異なり今のところ体重減少効果は報告なし。


※1 ツイミーグ インタビューフォーム
※2 メトグルコ インタビューフォーム
※3 Diabetes Care . 2021 Apr;44(4):952-959.  
※4 Diabetes Care . 2013 Mar;36(3):565-8.  
 2021年6月29日

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