コレクチム(デルゴシチニブ)はどのくらいの強さ? ステロイドのどのランクと同等??
アトピー性皮膚炎の治療薬としてコレクチム(デルゴシチニブ)というJAK阻害薬が2020年6月に発売されている。
アトピーといえば基本は保湿、症状に応じてステロイド、プロトピックですが、コレクチムはどの立ち位置なんでしょうか。
基本情報の比較
※コレクチムの添付文書に記載はないが、こちらも投与間隔は12時間のほうがよいとされている。※7
コレクチム(デルゴシチニブ)
適応:アトピー性皮膚炎
用法用量:成人0.5%を1日2回、小児0.25%を1日2回 1回最大5g
禁忌:なし(過敏症)
ざっと見たところ、プロトピックと比較して禁忌がなく、紫外線の制限、リンパ腫リスク、ほてり感などもなさそうで使いやすそう。
強さの比較 コレクチムはミディアムクラスのステロイドと同等?
コレクチムのランク
正確な検討が見当たらないが(まだないと思われる)、ミディアムクラス相当として使用されているとのこと。※8
プロトピックのランク
プロトピック軟膏0.1%:ストロングクラスのステロイド外用薬と同等※1
プロトピック軟膏0.03%:ミディアム~ストロングクラスのステロイド外用薬の中間に相当※2
→単純に「抗炎症作用」を見ると、コレクチム<プロトピックと考えられそうだが、コレクチムは正確なデータなし。
副作用、使用上の注意の比較
副作用の比較
プロトピックの主な副作用は、
第3相試験(顔、頸部1日週間):刺激感(ほてり感、ヒリヒリ感、そう痒感等)59.1%(52/88例)、感染症5.7%(5/88例)
第3相試験(四肢1日2回3週間):刺激感(ほてり感、ヒリヒリ感、
そう痒感等)80%(60/75例)、ざ瘡4.0%(3/75例)
コレクチムの主な副作用は、
第3相試験(1日2回52週):毛包炎3.1%(11/352例),ざ瘡2.8%(10/352例),刺激感2.6%(9/352例),紅斑2.0%(7/352例)
刺激感は圧倒的にコレクチムが少ない。
特段コレクチムで目立つ副作用はないが、内服のJAK阻害薬同様ヘルペスウイルスの活性化がみられるようで、水痘様発疹、口唇ヘルペス、帯状疱疹の報告あり。
紫外線に関する影響
プロトピックは紫外線により動物実験で皮膚腫瘍の発現が見られている。ので、紫外線療法は禁忌、日光も避けることとなっている。
コレクチムは動物実験で紫外線による毒性は見られていないとされている。※3
→プロトピック:紫外線× コレクチム:紫外線影響なし(見られていない)
腫瘍リスクについて
プロトピックは使用例において因果関係不明であるがリンパ腫、皮膚がんの報告があり、患者に対して要説明となっている(警告欄) 動物実験では高血中濃度持続でリンパ腫が見られている。
ただし、自然発生率を超えていないし、通常使用で高血中濃度となることはまず考えられない。7年の追跡で発がんリスクを高めないとするエビデンスもある。※4,6
コレクチムは動物実験では腫瘍リスクは認められていない。 ただ、内服のJAK阻害で報告があるため、RMPでは潜在的なリスクとして挙げられている。※5
→プロトピックは動物実験では認められているが、実臨床では認めらていない。(ただし、発がんリスクは長期に見る必要があり)
使用部位について
プロトピックは血中濃度が上昇してしまうためびらん、潰瘍には禁忌。
コレクチムは禁忌となっていないが、避けるとことなっており、基本的には使用は奨められない。※7
コレクチムとプロトピックはいつまで使う?
アトピー性皮膚炎の増悪時はステロイドでしっかり抑え、その後継続使用しやすいプロトピックに切り替えるといったやり方が推奨※6されている。
コレクチムの記載はまだないが、立ち位置的には同じ感じであり、実臨床でもそのように使われている。
それぞれ改善しない場合は○○週を目途に中止ということは書かれていますが、では、改善している場合にはいつまで使えばいいでしょうか。
添付文書上、
コレクチム:「症状が改善した場合には必要性を検討、漫然と投与しない」との記載にとどまっている。
プロトピック:「必要性がなくなった場合は中止、漫然と投与しない」と、こちらも具体的な制限はない。
プロアクティブ療法で症状が改善しても継続する場合もあり、ガイドライン※6では「個々の症例において皮膚症状、経過、検査値などから総合的に判断」となっている。
→どちらも投与期間の制限はない。個々の症例ごとに検討が必要。臨床試験ではコレクチム52週、プロトピックは7年の追跡試験などもある。
プロトピックとコレクチムの併用は?
立ち位置が同じ感じなので併用する必要性も感じませんが、紫外線のあたる部位だけコレクチムとか?考えられそうでしょうか。
コレクチムの臨床試験ではプロトピック使用者は除外されており不明。
別の部位に使うのであれば特に問題は感じない。
まとめ
コレクチムはプロトピックと比較して、
・刺激感が少なく、紫外線の影響も少ない(見られていない)。
・動物実験でも腫瘍リスクの報告がなく、長期使用しやすい。
・プロトピックと同じく、ステロイドで抑えてからの切り替えで使用されることが多そう。
・強さは明らかではないが、ミディアムクラスのステロイド相当として使用されている。
・禁忌がなく、使いやすい
・最大使用量はプロトピックと同じく1回5g
※1 F西日皮膚59(6).870.1997
※2 Reitamo S, et al. J Allergy Clin Immunol 109(3).539.2002
※3 コレクチムインタビューフォーム
※4 日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/modules/publicnews/index.php?content_id=2
※5コレクチム軟膏 0.5%・0.25%
に係る医薬品リスク管理計画書
※6 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018
※7 日本皮膚科学会ガイドライン デルゴシチニブの安全使用マニュアル
※8 ドクターサロン R3.7.12 アトピー性皮膚炎のデルゴシチニブ療法