モルヒネ→ナルサス、ナルベインの換算

 モルヒネ→経口ナルサス、注射ナルベインの換算 添付文書とガイドラインでは異なる?

オピオイド鎮痛剤はオピオイドローテーションや、経口が困難になった際に皮下注に変えるなど切り替えする機会がある。

たいていは添付文書に換算目安の記載がある。
(ガイドラインにも一部薬剤は記載あり)

ヒドロモルフォンを成分とする薬剤は経口のナルサスと注射のナルベインがある。
この製剤、経口モルヒネ→注射ナルベインに変換する場合、直接経口モルヒネから注射ナルベインに換算する場合と一旦モルヒネ注を経由して換算する場合で数値が異なってしまうし、添付文書の記載と違ってくるので混乱する。(私だけかもしれませんが・・・)

まずはオピオイドスイッチングの原則について。

※以前まとめたオピオイド全般の換算はこちら

オピオイドスイッチングの原則


換算表や添付文書に記載があるが、原則として、あくまで目安であり、等価換算で切り替えてもうまくいかないことがあるのでその後の調整は大事。

ガイドライン※1にも以下の記載がある。

4.オピオイドスイッチング 
 2オピオイドスイッチングの実際
  ②患者の症状に合わせて目標とする換算量を設定する。計算上の換算量は「目安」であり、オピオイド間の不完全な交叉耐性や薬物に対する個体差が大きいことから、実際には換算表通りにはならないことを考慮し、患者個人に合わせた投与量へ調整することが重要である。一般的に、疼痛コントロールは良好だが、副作用のためにオピオイドスイッチングを行う場合は、前述の不完全な交叉耐性があるので注意を要する。また、患者の病態が悪い、高齢であるなどの場合も少量からの変更が望ましい。

ガイドライン上の換算表

換算表については、以下の注意書きがある
換算比は、本来、経口剤の生体内利用率から決定される。一方、がん患者を対象とした換算比に関しては多くの報告がなされており、その数値にはばらつきがある。ばらつきの理由として、報告事に使用されている薬剤の薬物動態が異なること、また痛みの安定している患者とそうでない患者が混在していることなどが挙げられる。多くの報告は痛みに安定している患者での対モルヒネでの単回投与に基づいた換算となっていることに注意が必要である。~換算表のみに頼った変更はするべきではない。~本ガイドラインでは標準的な換算の目安とし、各種ガイドラインなどの換算表をもとに検討し、使用しやすいと思われる数値で示すこととした。

ガイドライン上は上記の通り、モルヒネ注射10~15㎎がヒドロモルフォン1~2㎎とかなり幅がある。上記の通り、使用しやすい数値にしているとことわりもあり、何度も記載されているがあくまで「目安」。

各病院が提示している換算表もこの範囲でばらつきがある。
あくまで「目安」なので、このくらい幅があっていいのでしょう。


モルヒネからヒドロモルフォン(ナルサス、ナルベイン)への換算


経口モルヒネ→経口ナルサスにする場合、添付文書※21/5。これはだいたいどこの病院もそろっている。(ガイドラインも経口の換算目安は幅がない)

例)経口モルヒネ30㎎ → 経口ナルサス6㎎


経口ナルサス→注射ナルベインにする場合、添付文書※31/5。これもだいたいどこも同じ記載。(ガイドライン上は1/3~1/6と幅あり)

例)経口ナルサス6㎎ → 注射ナルベイン1.2㎎

※注射ナルベイン→経口ナルサスは5倍ではなく、2.5~3倍と記載されている病院もある。


この流れで、経口モルヒネ→注射ナルベインは1/5×1/5で1/25と計算される。

例)経口モルヒネ30㎎ → 注射ナルベイン1.2㎎



では、経口モルヒネ→注射モルヒネ→注射ナルベインとなった場合は?
通常、経口モルヒネ→注射モルヒネは1/2になるので、

例)経口モルヒネ30㎎ → 注射モルヒネ15㎎

ただし、本来幅がありガイドラインでは経口モルヒネ30㎎→注射モルヒネ10~15㎎となっている。


次に注射モルヒネから注射ナルベインにするにあたり、経口モルヒネ→経口ナルサスは1/5でしたが、注射モルヒネ→注射ナルベインは1/5ではないので注意。添付文書上は1/8

例)注射モルヒネ15㎎ → 注射ナルベイン1.875㎎

だと思うのですが、そもそも経口モルヒネ30㎎が注射モルヒネ10~15㎎となっているので、それを考慮してか注射モルヒネ15㎎を注射ナルベイン1.2㎎(1.25㎎)と記載されているところが多い。

例)経口モルヒネ30㎎ → 注射モルヒネ10㎎(~15㎎) → 注射ナルベイン1.25㎎(~1.875㎎)

経口モルヒネから一気に注射ナルベインになる場合は前述の通り1/25倍のところが多いので、これを考慮すると妥当となる。


経口モルヒネ→注射ナルベインの場合は1/25なのに、注射モルヒネを経由して換算してしまうと計算がずれる場合があるのでわかりにくい。(結局のところ経口モルヒネ→注射モルヒネの変換時にどうしたかが影響していると考えればいいでしょうか。)

経口モルヒネ×1/5=経口ナルサス、経口ナルサス×1/5=注射ナルベイン
経口モルヒネ×1/2(~1/3)=注射モルヒネ、注射モルヒネ×1/8=注射ナルベイン


例)経口モルヒネ30㎎×1/5=経口ナルサス6㎎、経口ナルサス6㎎×1/5=注射ナルベイン1.2㎎
例)経口モルヒネ30㎎×1/2(~1/3)=注射モルヒネ(10~)15㎎、注射モルヒネ(10~)15㎎×1/8=注射ナルベイン1.25mg ~1.875mg

ちなみにバイオアベイラビリティで考えると、ナルサスのバイオアベイラビリティは24%※4とされており、バイオアベイラビリティだけ考えると、経口ナルサス→注射ナルサスは1/4.2となるが、添付文書の記載は1/5。


結局のところどの値?といった感じですが、無難に添付文書の記載通り、

経口モルヒネ→経口ナルサスは1/5倍
経口ナルサス→注射ナルベインは1/5倍
注射モルヒネ→注射ナルベインは1/8倍
(経口モルヒネ→注射ナルベインは1/25倍)

で計算したものを目安とし、状況に合わせて調整といった感じでしょうか。

まとめ

オピオイドの換算表は、

あくまで「目安」。患者の状況に応じて適宜対応が必要。

添付文書上は
経口モルヒネ×1/5=ナルサス
注射モルヒネ×1/8=ナルベイン

ガイドラインの換算表は
経口モルヒネ×1/5=ナルサス
注射モルヒネ10~15㎎=ナルベイン1~2㎎(1/1.75~1/10倍)・・・大体1/8?


※1ナルサス錠 添付文書
※2ナルベイン注 添付文書
※3がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020
※4https://www.pmda.go.jp/drugs/2017/P20170406004/430573000_22900AMX00515_B100_1.pdf
 2021年8月30日

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