冠動脈疾患予防にコルヒチンが有効?

 心筋梗塞後の患者にコルヒチンを投与すると死亡率や心筋梗塞再発率が下がる?

業務中にちらっと耳にしたので詳しく調べてみると、2019年に出されている論文のよう。

Efficacy and Safety of Low-Dose Colchicine after Myocardial Infarction(N Engl J Med 2019; 381:2497-2505)

これより以前にプラセボコントロールされていない試験ではあるが、500名程度の患者の2群間比較試験おいて、コルヒチン0.5㎎/日による心血管イベント抑制効果が報告されていたよう。※1

血管における炎症を抑えることで、心血管イベントを抑制することができるということがわかっており、複数の臨床試験が行われているよう。
メトトレキサートでは残念ながらイベント抑制効果は示せていない(CIRT)。
カナキムマブは炎症性サイトカインであるインターロイキン-1βに対する抗体薬で、15%の心血管イベント抑制効果が報告されている(CANTOS)。


コルヒチンの抗炎症作用

コルヒチンは、インフラマソームという炎症生性サイトカインを産生するたんぱく質を抑制する効果が報告されているよう。※2

なので、心血管イベントも抑制されるのではないかという考え。

試験結果を簡単にまとめ。


コルヒチンの心血管イベント抑制効果

試験デザイン:ランダム化二重盲検プラセボコントロール比較試験 医師主導

対象患者

・選択基準
心筋梗塞発症後30日以内の患者
予定されていた経皮的血行再建術を受け,スタチン療法を含め、ガイドラインに則った治療を受けている患者。

・組み込まれた患者
全:4747名(コルヒチン:2366名、プラセボ:2379名)
平均年齢:60.6歳
女性:19.2%
PCI施行患者:93%。
合併症:高血圧:51.0%、糖尿病20.2%
登録時の服用薬:アスピリン98.8%、その他の抗血小板薬97.9%、スタチン99%、β遮断薬88.9%

・除外基準
重症心不全、LVEF>35%、3カ月以内の脳卒中既往歴 、2型心筋梗塞、過去3年以内の冠動脈バイパス手術、過去3年以内の非皮膚癌の既往、炎症性腸疾患、慢性下痢、神経筋疾患、CKが基準尾3倍以上、腎臓病(SCrが基準の2倍以上)、重篤な肝疾患、薬物・アルコール乱用、長期的なグルココルチコイド全身投与、コルヒチン過敏症の既往歴

介入

コルヒチン0.5㎎/日 
追跡期間中央値:22.6カ月

主要評価項目

以下の複合エンドポイント:心血管死、非致死性心停止、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈結構再建が必要な狭心症による緊急入院

結果

複合エンドポイントの発生率:ハザード比(HR)0.77(95%CI 0.61~0.91)
コルヒチン:5.5% プラセボ:7.1%

それぞれのエンドポイント別に見ると、
心血管死:HR0.84 (95%CI 0.46~1.52) 
心停止:HR0.83 (95%CI 0.25~2.73)
心筋梗塞:HR0.91 (95%CI 0.68~1.21)
脳卒中:HR0.26 (95%CI, 0.10 to 0.70)
緊急入院:HR0.50 (95%CI 0.31~0.81)

→それぞれをみると、脳卒中と緊急入院が有意に下がっており、それ以外はそうでもない。

副作用の発現状況

コルヒチンといえば、消化器症状のイメージですが、吐き気と鼓腸だけ有意差はついていますが、全体的にはプラセボ群と差が出ていない。

これなら長期的に低用量をのんでもいいですかね。
追跡期間が2年弱ではありますが。


※1の試験はLoCoDo、今回の試験はCOLCOTと名前が付けられている。
どちらも愛嬌のある名前ですね。

 
※1 J Am Coll Cardiol 2013;61:404-410.
※2 Gout and Nucleic Acid Metabolism Vol 39 No.1 2015
 2022年2月26日

関連記事