適応違いのジェネリックへの変更は査定されない?

 一般名処方や先発名処方の際、適応が異なる後発品(ジェネリック)に変更して適応外となってしまった場合、適応違いで査定される? 厚労省と支払基金の見解

R4.6月にサムスカのジェネリックであるトルバプタンが発売された。

先発のサムスカには肝硬変以外に心不全や腎疾患関係の適応がある。

しかし、ジェネリックのトルバプタンには「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」しか適応がない。


今までもドネペジルのレビー小体型認知症への適応やビ・シフロールのレストレスレッグへの適応などでも先発とジェネリックの適応違いは起こっていた。

一般名や先発で変更不可となっていなければ変更できてしまいますが、この場合、査定や返戻はされるのでしょうか?

この件に関して、適応違いは査定されない通知があるという話を耳にしたのですが、当薬局は普通に査定(正確には医療機関が査定されるわけですが・・・)されていたので、今更ながらどのようなことになっているか過去の通知等をもとにまとめてみました。


ジェネリック医薬品の適応違いが査定されないという通知について

おそらくこれは以下の内容と思われる。

※記者会見の内容のようですが議事録などは見つからないため、日経DIおよび参議院答弁資料より抜粋
〇社会保険診療報酬支払基金 2012年1月30日 記者会見資料
~しかしながら、保険薬局から処方せんを取り寄せても保険医療機関または保険薬局いずれに対し、当該査定分を請求するのかは判断がこんな案であると考えら~一律に審査しない~」

〇支払基金理事長から厚生労働省保険局長に宛てた照会内容(平成22年12月13日) 
 保険薬局において、先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品に変更調剤された場合に、結果として支払基金の審査で適応外として査定され、保険医療機関または保険薬局のいずれかに査定額を請求しなければならないケースが生じる。
 しかしながら、保険薬局から処方箋を取り寄せても保険医療機関または保険薬局のいずれに対し、当該査定分を請求するかの判断は困難であると考えられ、その取扱いについて、厚生労働省に見解を求めた。


これに対して、厚労省は以下のように回答している。

 先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品について、一律に査定を行うことは、後発医薬品への変更調剤が進まなくなること、また、それに伴い、医療費が増える可能性があること等を保険者に説明し、影響を理解してもらうよう努めていただきたい。

なんともよくわからない通知を出しており・・・これを後発に変えても査定されないと解釈した人がいるものと思われる。

ただ、この通知に関してはその後のじほうの取材に対して以下の回答をしているようです。

 厚労省保険局医療課はじほうの取材に、査定を行い医療機関と薬局のどちらに薬剤費の自己負担分を除いた7割を負担させるか判断が付く場合は査定処理を行い、判断できない場合は査定処理しないとした。厚労省が支払基金に出した「一律に査定を行うと変更調剤が進まなくなる」との見解について、医療課は医療機関と薬局のどちらに原因があるか分からない場合に強引な査定処理は行わない意味だと説明した。

ということで、判断つけば査定してねってことですかね。

薬局のせいになるパターンとは・・・?
・変更不可なのに変更した(もはや査定の前に違反)
・患者聴取で適応が明らかなのに変更した?(これは微妙?)

基本的には病院が切られる感じと思っています(うちは今まで病院しか切られていないです。変更不可付いていなかったので・・・)



この件に関してはその後も国会への質問も何度かやり取りされていたようなので、抜粋してみました。

後発品への変更による適応違いについて 国会でのやり取り

最初の質問は平成24年6月20日、回答が6月29日
第180回国会質問主意書及び答弁書 提出番号151 質問 回答 より抜粋・要約

質問
 二 一部の後発医薬品はせん尾暑い薬品の効能効果の一部について小児を受けていないものがあり~適応がない後発医薬品に変更調剤されたり、一般名処方した場合に患者の疾患に適応がない後発品医薬品が調剤されたりした場合に~査定。減額される可能性がある。~一律に査定を行うことは困難と考えるが、政府の見解を明らかにされたい

回答
効能効果等に相違がある後発品が当該先発医薬品に変えて調剤された場合も含め、診療報酬請求の審査については、個別の症例に応じて、療担規則、診療報酬の算定方法等に基づき、適切に行われていると考えており、この見解を保険者に個別に周知する必要はないと考えている。

なんとも、回答になっていない回答ですね笑

結局個別に判断しろと・・・そしたら突合で査定しますよね・・・適応がないのですから。



この回答に納得のいかなかった質問者はさらにもう一度質問しています。

2回目の質問は平成24年7月9日、回答が7月17日
第180回国会質問主意書及び答弁書 提出番号185 質問 回答 より抜粋・要約

質問
・現在も本通知の見解は維持されているのか明らかにされたい。(通知とか先ほど載せた保発0117第1号:「先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品について、一律に査定を行うことは、後発医薬品への変更調剤が進まなくなること、また、それに伴い、医療費が増える可能性があること等を保険者に説明し、影響を理解してもらうよう努めていただきたい。」の部分について。)
・本通知は診療報酬の査定にも当てはまるものか

回答
・通知で示した見解について変更はない
・診療報酬請求の審査については、一律に査定を行うべきものではなく、個別の症例に応じて、療担規則等に基づき行われるべきものであり、お尋ねの通知はこうした審査の原則を踏まえた見解を示したものである。

うん、全く進んででないですね笑
もう答えがないんだからそういえばいいのに、不毛なやり取りですね。

そして質問者はこの不毛な回答に腹を立て(?) 、再度質問しています。まだ続きます笑。

3回目の質問は平成24年9月6日、回答が7月17日
第180回国会質問主意書及び答弁書 提出番号255 質問 回答 より抜粋・要約

質問
保発0117第1号について、以下の通り質問する。
・保険薬局で調剤した後発医薬品に先発品の適応がなく、結果として~適応外となる場合について、社保が査定を行わない場合、本来社会保険診療の対象でない療養について、社会保険診療の財源が支払われることとなり、公的資源からの不当な資質を容認することになる。この問題について、厚労省はどのように考えるのか。

・仮に、前期通知が、保険医療機関または保険薬局のいずれに請求するべきか判断が困難な場合について、「一律」に査定処理は行わないという趣旨であり、個別事例については査定するとの趣旨であったとしても、保険診療の適応外の後発医薬品について、保険診療のための財源から、法令に反する脂質が行われる可能性がある、この問題について、厚労省はどのように対処しているのか。

回答
原則として先発品とは~後発品とは~(薬事法上の位置づけがグダグダ記載されている)~先発と効能、効果等に相違がある後発医薬品が存在することがある。

保険診療での医薬品の扱いについては、原則として、承認を受けた効能・効果等によることとされているが、有効性と安全性の確認された医薬品が学術上の根拠と薬理作用に基づき、適切に処方された場合には例外的に適応外使用が認められる場合がある。このような扱いを考慮すれば、~変更調剤が結果として適応外使用に当たる場合に、当該後発医薬品を診療報酬の支払いの対象とすることは、必ずしも不当とまではいえず、また、個別の診療報酬請求の審査については、審査支払機関において、個別の症例に応じて、療担規則等に基づき、適切に行われていると考えている。

これ以降質問は続いていないようです。

最後まで厚労省としては、結局明確な回答はない・・・

支払側に任せるという感じですね・・・

それで支払基金が適応ないのに査定しなかったとしても、それは適応外認めるときと同じように別に不当とはいわないよ と・・・

なので、一律に支払い基金が査定するわけではないと思いますが、実際に査定されている例を個人的には見ているので、厚労省の回答通り、「個別の症例に応じた対応」が実行されているのが現実でしょうか。

トルバプタンに変えて門前が査定されまくったら・・・恐ろしいので変更はしばらく避けたいところです・・・


まとめ

ジェネリック医薬品に変更したことにより、先発と適応が異なり適応外になってしまった場合の査定について

・厚労省としては、一律に審査はせず、個別に対応するようにとの姿勢。 また、適応外となってしまっていても査定しないことが(支払側が)不当という判断にはならないとの見解。

・支払側としては、一律に審査しないとの見解。

・現状は、上記の見解通り、審査される場合とされない場合がある。

※自店の状況
ビ・シフロールをジェネリックに変えた→レストレスレッグへの処方だったようで査定
アリセプトをジェネリックに変えた→レビー小体型認知症への処方だったようで査定
(現在はジェネリックも適応あり)

 2022年7月6日

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