酸化マグネシウムと制酸剤(PPI,H2ブロッカー)の併用

酸化マグネシウムにPPI(ラベプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール等)やH2ブロッカー(ファモチジン、ラフチジン等)などの制酸剤を併用するとどの程度効果が減弱する?

酸化マグネシウムは胃酸により以下の反応を起こし、最終的に難溶性の重炭酸塩および炭酸塩、腸管の浸透圧を高めて水を引き寄せる。


反応には胃酸が必要であり、制酸剤の併用により効果が減弱すると考えられているが、添付文書に併用注意などの記載がない。

実際どうなのか調べてみました。


酸化マグネシウムとPPI、H2ブロッカーの相互作用を調べた報告

日本における後ろ向き研究の報告 PPIとH2R拮抗薬との相互作用

厚労省の研究報告の報告状況※3という資料に以下の記載がある。

酸化マグネシウム(MgO)と制酸薬との相互作用を調べるため、日本でMgO単剤使用患者67例、H2受容体拮抗薬(H2RA)併用患者14例、プロトンポンプ阻害薬(PPI)併用患者27例を対象に後ろ向きに調査した結果、H2RA併用患者及びPPI併用患者はMgO単剤使用患者と比較してMgO1日投与量が有意に多く、排便コントロール良好患者の割合が有意に低かった

こちらに原文の情報は記載ないが、論文を探していると以下の文献が引っかかった。人数等が同じなので。おそらくこれが原文と思われる。


有料なので全文は見ておりませんが、「排便コントロール良好」は、1,000 mg MgOの投与レベルで十分にコントロールされている患者とされている。

この患者割合が、PPI、H2ブロッカー服用患者では有意に低くなってしまったよう。


炭酸マグネシウムとの違いは?

上記胃内反応式を見ると、炭酸マグネシウムでも良いのでは? と思いますが、炭酸マグネシウムは制酸作用が酸化マグネシウムの1/2程度、瀉下作用も弱いとされている。※2

炭酸マグネシウム(MgCO3)は胃酸と反応し、
①MgCO3+2HCl → MGCl2+H2O+CO2
となってしまう。

その効果は、、腸管内で炭酸水素塩を形成することによる塩類下剤効果、発生する炭酸ガスによるものと考えられている。※2

①のあとにMGCL2がNaHCO3と反応して炭酸水素塩を出すということでしょうか。
そうなると二酸化炭素が発生する以外は酸化マグネシウムと変わりない気がしますが・・・。


あまり十分は文献は見当たりませんでした。

具体的にどの程度減弱してというのが分かれば増量の目安もつきそうですが・・・

そもそも酸化マグネシウムが制酸剤、自分で自分の効果を減弱する可能性もあるわけですね。


まとめ

後ろ向き研究でPPI、H2ブロッカーにより酸化マグネシウムの効果が落ちたとの報告あり。

どの程度減弱するかは不明。



※1 酸化マグネシウム「ヨシダ」インタビューフォーム
※2 炭酸マグネシウム 添付文書
※3 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000076911.pdf(12ページ)

 2022年8月19日

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