貧血にリオナを使う理由 リオナとフェロミアの違い

リオナのほうがフェロミア(クエン酸第一鉄)より吐き気、嘔吐などの消化器症状は少ない?

元々高リン血症の治療薬であったリオナに鉄欠乏性貧血の適応が後から追加になった。

フェロミアがあるし、値段が数十倍高いリオナをわざわざ処方する理由は? と思ったので、副作用等比較してみました。


有効性の比較

リオナ VS フェロミア

リオナはクエン酸第一鉄(フェロミア)との比較試験が実施されており、非劣勢が証明されている。

ですので、効果に関してはどちらでもよさそう。

リオナ添付文書 より

力価換算

上記試験は、リオナ1000mg/日とクエン酸第一鉄(フェロミア)100mg/日の非劣勢を検討した試験となっています。

リオナ1000mg/日=フェロミア100mg/日



服用時点の違い

〇リオナは食直後
〇フェロミアは食後


フェロミアはpHに関係なく吸収されるよう設計※1されているため、空腹時ではなく食後の用法になっている。逆に言えば空腹時でも吸収は問題なさそうだが、胃腸障害が多くなりそう。

リオナは元々リンの吸着剤で、食事からのリンの吸収を抑えるために食直後の用法。だから、貧血でもそのままなのかと思い調べてみる以下の記載があった。


鉄欠乏性貧血患者を対象に本剤500mg を空腹時若しくは食直後に単回経口投与した臨床薬理試験の結果,本剤投与による血清鉄濃度の上昇は食直後投与の方が空腹時投与に比べて高い傾向を示したものの,臨床的に意義のある違いはなく,明らかな食事の影響は認められなかった。鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第 III 相臨床試験では,本剤を 1 日 1 回又は 2 回食直後に経口投与することにより,本剤の有効性及び安全性が確認された。


結局は臨床試験での用法ということですね。
空腹時でも効果は問題なさそうですが、副作用等は不明。食後でどうなるかも不明。


副作用の違い

わざわざ薬価の高いリオナを使う理由として考えられるとすればここが一番と思いましたが、意外とリオナも吐気がでている。

一般に鉄剤は消化器症状(吐き気、嘔吐)の発現率が高い。


承認時臨床試験における副作用発現状況※1,2

フェロミア

悪心・嘔気(9.12%)、腹部不快感(7.49%)、腹痛(5.54%)、嘔吐(3.58%)、便秘(2.61%)、下痢(2.61%)、胃腸障害(1.95%)
※症例数307例

リオナ

下痢(16.3%)、悪心(9.7%)、便秘(3.4%)、嘔吐(1.5%)
※症例数465例


上記をみると大差ないように思ってしまいますが、直接比較ではないのでそのまま比較するのは注意。
リオナの非劣勢試験ではクエン酸第一鉄と実施されており、審査報告書に副作用の発現状況も記載がある。

リオナとクエン酸第一鉄の非劣勢試験(GBB4-1試験)時の発現状況※3

全体の有害事象発現率:リオナ(48.8%)、クエン酸第一鉄(63.7%)

胃腸障害:リオナ(35%)、クエン酸第一鉄(48.5%)
下痢:リオナ(26%)、クエン酸第一鉄(23.4%)
悪心:リオナ(13%)、クエン酸第一鉄(32.7%)
嘔吐:リオナ(2.9%)、クエン酸第一鉄(15.2%)

悪心・嘔吐に関しては統計検定も実施されており、リオナのほうが有意に低くなっている

リオナは下痢が高頻度なイメージでしたが、クエン酸第一鉄も意外と高く、差はなさそう。


まとめ

リオナはフェロミア(クエン酸第一鉄)と比べて、

・消化器症状が有意に低く、吐き気などに悩んでいる場合は最適。
・有効性は非劣勢(リオナ1000mg≒フェロミア100mg)
・薬価は20倍高い(同力価だとフェロミア100mg=15.4円、リオナ1000mg=304円  2022.4時点)

※1 フェロミア インタビューフォ-ム
※2 リオナ インタビューフォーム
※3 リオナ 審査報告書(2021年03月23日)
 2022年9月5日

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