大正製薬から発売予定 アライ(オリルスタット)の効果や副作用は? カロリミットやナイシトールなどとの違いは?
令和4年11月28日の薬事・食品衛生審議会 要指導・一般用医薬品部会で、抗肥満薬であるアライ(成分名:オリルスタット)の承認が了承された。
一般用医薬品(要指導医薬品)なので、処方箋なしで薬局販売となる。
既に海外では承認されており、広く使用されているようなので、どの程度の効果があるのか調べてみました。
作用機序
脂肪(トリグリセリド)は3つの脂肪酸がグリセロールに結合した状態である。
食事から吸収される際、このままでは吸収できないので、リパーゼという酵素が働き、3つの脂肪酸を分離させて吸収される。
オリルスタットはこのリパーゼを阻害することで、食事からの脂肪の吸収を抑制する。
有効性について どのくらい瘦せる?
メタアナリシスの報告
二重盲検比較試験(信頼性の高い臨床試験の方法)のメタアナリシス(多くの臨床試験の結果をまとめて解析したもの)では,オルリスタットはプラセボと比較し1年間でー2.6 kg (95% CrI, -3.04 to -2.16 kg). となっている。※3
オリルスタットは16試験、10363人が解析されている。
対象患者の7割が女性となっている。
解釈する際の注意は対象患者の平均体重。
解析された各試験のBMIの平均の中央値は36.1(32.6-42)であり、体重は100.5kg(95.3-115.8)となっている。
この辺をしっかり考慮しましょう。
日本人に対する有効性
日本人200人を対象とした24週間のランダム化比較試験の報告がある。※4
〇対象者
選択基準は過度の内臓脂肪蓄積(男性で胴囲 ≧ 85 cm、女性で ≧ 90 cm、内臓脂肪面積 100 cm2 に相当)を持ち、代謝性疾患のないとなっている。
実際の試験参加者は男性が8割、試験開始前における薬剤群およびプラセボ群のそれぞれの腹囲は121cm、133cm、BMIは27.47、27.11、体重は80.38kg、78.59kgとなっている。
海外と比べるとやはり体重低めですが、日本人で考えるとなかなかの肥満でしょうか。
〇介入内容
オリルスタット群はオリルスタット60mg/回を1日3回。
参加者全員が、食事の改善、運動を維持するように助言された。
〇結果
腹囲:-13.50%( ± 1.52%)
胸囲:−2.51%( ± 0.25%)
体重:−2.79%( ± 0.30%)
すべてプラセボより有意に改善している。
ベースラインの体重から分かりやすく考えると、24週間でー2.2kg程度といった感じです。
安全性・副作用について
先のメタアナリシス内の安全性解析においては、副作用による中止はオリルスタット投与群で2.7倍高かったとなっている。
プラセボと比較して突出している副作用は目立たないが、胃腸関連の副作用がやや多いような印象。
日本人を対象とした臨床試験時の副作用発現率
〇副作用の発現率
オリルスタット群:45%
プラセボ群:11%
〇副作用の詳細
オリルスタット群:排便関連(便への油性分漏出、放屁等)41%、肝機能検査値異常2%
プラセボ群:排便関連10%
重篤な副作用は両群とも報告なし。
治療を必要とする副作用はなく、治療中止となった参加者もいなかった。
脂溶性ビタミンが欠乏する?
脂肪の吸収が抑制されることで懸念されたようであるが、臨床試験ではビタミンA,D,Eの濃度に変化は見られなかったとされている。
大腸がんのリスクについて
動物実験において、オリルスタット投与により前がん病変がみられたためにコホート研究が実施されたがリスク増加がみられなかったとのこと※1
対象者は? 誰にでも使用できる?
適応患者
臨床試験の選択基準より、選択基準は過度の内臓脂肪蓄積(男性で胴囲 ≧ 85 cm、女性で ≧ 90 cm、内臓脂肪面積 100 cm2 に相当)で基礎疾患のない患者が対象となるよう。
今後正式に承認されたら更新。
食事制限は?
この薬剤は食事・運動療法が必須であり、臨床試験では300~400kcal/日の食事量の減量および食生活の改善についてアドバイスが実施されている。
運動はどの程度する?
運動に関しては維持するように指示したとの記載のみで具体的にどの程度やるかなどの指示はなかったよう。
カロリミット、ナイシトール、マジンドールなど他の肥満治療薬との違いは?
食事からの脂肪や糖の吸収を抑えると言われると、CMででてくるカロリミットやナイシトールなどが思い浮かぶ。
また、肥満治療薬として医療用医薬品の承認を受けているマジンドールもある。
この辺の薬剤の作用機序もおさらい。
カロリミット
以下の5つの成分が有効成分とされている。
糖の吸収を抑える:ギムネマ酸、イミノシュガー
脂肪の吸収を抑える:エピガロカテキンガレート、キトサン、ファセオラミン
一応ランダム化比較試験で血糖と血中中性脂肪の上昇抑制効果を検証し、特定機能食品として届出されている。
食事からの吸収が抑えられることは確かと思われるが、実際にどの程度体重減少につながるかは不明。
ちなみに、オリルスタットは試験期間中に血中中性脂肪やコレステロールの低下は見られていない。
ナイシトール
ナイシトールは生薬成分であり、「防風通聖散」という漢方薬である。
防風通聖散は肥満症に適応があるが、体重減少効果はプラセボと変わらないとの報告がある。※5
十分なエビデンスは見当たらない。
マジンドール
医療用医薬品としては日本で唯一承認されている薬剤。(商品名はサノレックス)
作用機序は、中枢に作用(食欲調節に重要な視床下部室傍核の興奮と外側野の抑制)して食欲を抑制する。
日本人を対象とした試験では、14週後に平均ー4.6 kgとなっている※2
こちらの薬剤は適応患者がかなりきつめで、「あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)における食事療法及び運動療法の補助」となっている。
その他
難消化性デキストリンやサラシアなどの成分は一定基準含んでいればトクホ申請できる。(規格基準型)
どちらも糖の吸収を抑える成分。
まとめ
アライ(オリルスタット)は、
・日本人において24週間の投与で体重―2.79%。プラセボと比較しても有意差あり。
・副作用としては便への油状成分の漏出など排便関連が多い。
・食事・運動療法の併用が前提。
※1 BMJ. 2013 Aug 27;347:f5039.
※2 Am J Clin Nutr 55 : 199S―202S, 1992.
※3 JAMA . 2016 Jun 14;315(22):2424-34.
※4 Adv Ther. 2019; 36(1): 86–100.
※5 Jpn. J. Pharm. Health Care Sci.34(6) 513―521 (2008)