抗不整脈薬の使い分け

薬剤で治療可能な不整脈は? 不整脈の種類と薬剤の使い分けについて


外来で抗不整脈の処方を見てもいまいちどんな状況で、なぜその薬剤が処方されているか分からないことが多い。

今回はガイドラインを中心に、どのような場合にどの薬剤が処方されるのかまとめてみました。

不整脈の種類

下記は不整脈治療薬物に関するガイドラインに記載のある不整脈の種類。(徐脈は症状なければ治療しないので割愛)

血行動態、心機能、心拍数などでさらに細かく治療が変わってくるが、大まかに治療方針をまとめました。

心室性不整脈

心室性期外収縮
症状に合わせ抗不整脈(無症候は無治療)

持続性心室頻拍
発作は即停止治療→予防にアブレーション、ペースメーカー(ICD)→できなければ抗不整脈薬

心室細動
発作は即停止治療→予防にICD→できなければ抗不整脈薬

発作性心室頻拍(QT延長で起こる=トルサード・ド・ポワンツ、多形性心室頻拍※)
発作時は即停止治療→QT延長の原因治療、β遮断、ICD

※この2つは発作性だが、心室細動に移行しやすいため、治療として心室細動と同じようになる。

上室(心房)性不整脈

上室性期外収縮
症状に合わせ抗不整脈(無症候は無治療)

発作性上室頻拍
発作は緊急性に応じ治療→予防にアブレーション→できなければ抗不整脈薬

心房細動(発作性・持続性)
抗不整脈(リズムコントール)+抗凝固
β遮断、Ca遮断(レートコントロール)+抗凝固

心房粗動
抗不整脈+場合により抗凝固


まとめると・・・
・期外収縮は症状がなければ基本治療はしない。
抗凝固薬が必要になるのは心房細動。(心房粗動の血栓リスクは細動の1/3であり、必要性は個々に判断)
・心室性は突然死等につながるため要治療、心房性は症状に合わせて。

※アブレーション:心臓の一部を焼き、異常な伝達を遮断する


各不整脈と薬剤選択

各不整脈に対してどのような薬剤が使用されるかいていきます。

抗不整脈が使用される不整脈

・持続性心室頻拍の予防
・心室細動の予防
・発作性上室頻拍の予防
・心室細動(+抗凝固薬)
・心室粗動(+場合により抗凝固薬)



持続性心室頻拍
概要
突然死の主因で突然出現する。
・リエントリーにより起こるとされている。
・発作時はまず停止が最優先で直流通電、アミオダロンやリドカインの静注。
・予防の基本はICD。(心筋梗塞等基礎疾患がない場合はアブレーションで根治可能)
・ICDの埋め込みができなかったり、ICD埋め込みをしたうえでさらに再発予防のために薬物治療が行われる

薬物治療(予防)

・基礎疾患あり
アミオダロン、ソタロールなどのⅢ群が多く用いられる。
その他ベプリジルやβ遮断薬が使用される。

・基礎疾患なし
アブレーション失敗・施行不可の場合、Ca遮断薬→β遮断→Na遮断の順で使用。

※ソタロール(β遮断薬)の適応は心室頻拍、心室細動のみ
アミオダロン、ソタロールともに他の抗不整脈薬が無効の場合のみ使用可能。


心室細動(+トルサード、多形性心室頻拍)
概要
・急激に血流不足となり意識消失する最も重篤な不整脈
QT延長に伴い出現する多発性心室頻拍は、発作の停止と再発を繰り返す(心室細動を繰り返すイメージ)疾患で、トルサード・ト・ポワンツと呼ぶ
・発作時は直ちに直流電量、回復しない場ニフェカラント、アミオダロン。
・トルサード・ド・ポワンツの場合、Mgの静注が有効。

※ガイドラインでは心停止を起こす重篤な不整脈として、発作性心室頻拍の中でトルサード・ト・ポワンツと多形性心室頻拍を同じ項目で扱っている。


薬物治療(予防)

・心疾患あり
ICDが第一選択、心機能低下がみられていない場合アミオダロンでも可。

・心疾患なし
QT延長があり、その原因がはっきりしている場合はその原因治療を行う。
QT延長を起こしている原因が見当たらない場合、β遮断薬、それでもだめならICD。


発作性上室頻拍
概要
・房室結節リエントリー、房室回帰、心房内リエントリー、異所性自動能亢進により起こる。(90%は房室結節のリエントリー・回帰=ここを抑えればよい=Ca拮抗薬)
・WPW症候群では副伝導路も関与するためK遮断、Na遮断が有効。
・動悸、胸部不快感を生じる。
ほとんどの場合アブレーションで根治可能なため薬物治療は限られてた場合のみ。

薬物治療(予防)
基本はアブレーションだが、不成功・希望しない場合は心機能に応じ抗不整脈。

・心機能中等度以上低下
陰性変力作用(心房収縮力抑制)の少ないNa遮断薬を用いる…下図①
心房結節リエントリー型の場合はジゴキシン→Na遮断薬となる…下図②

・心機能が正常~手低度低下
心房結節の伝導を遮断するCa遮断薬、β遮断薬、ジゴキシンが第一選択…下図③
副伝導路が関与するWPW症候群の場合、副伝導路の不応期を延長するK遮断薬が第一選択、Na遮断薬が第二選択…下図④

心房細動
概要
・機序は明確にわかっていないが、複数のリエントリーがみられる。
・統率のない早い複数の興奮により、心房収縮が十分にできなくなり、心房なの血液がよどんでしまうため血栓を形成しやすい状態となる。
・様々な背景(弁膜性、初発、発作性、持続性、副伝導路等)があり、各状況ごとに治療が異なる。

薬物治療
心拍数調整(レートコントロール)又は洞調律調整(リズムコントロール)の2通りある。

洞調律調整(リズムコントロール)
心房細動を止める=除細動
使用薬剤:Na遮断

心拍数調整(レートコントロール)
心房細動はそのままで、心拍数をコントロールする。
使用薬剤:β遮断、Ca遮断、ジキタリス、ベラパミル

J-RHYTHM試験ではどちらの治療でも生命予後に差はなかったが、発作性心房細動の場合リズムコントロールのほうがQOLが良かった


・基礎疾患のない心房細動(孤立性心房細動)
発作性:洞調律調整が優れている=チャネル解離が遅いNa遮断(ピルジカイニド、ジベンゾリン、プロパフェノン、ジソピラミド、フレカイニド)
持続性:心拍数調整が優れている=ベプリジル、アミオダロン、ソタロール

・基礎疾患(心不全、心肥大、虚血)がある心房細動
まずはその原因治療(ARB、ACE、β遮断)=アップストリーム改善。
その次に副作用の少ない、リズムコントロールできる抗不整脈(洞調律調整の場合は電気ショック、心拍数調整の場合はβ遮断、Ca拮抗薬)


抗凝固療法

先に述べたように心房細動では心房内の血流がよどんだ状態になっており、血栓ができやすい状態のため抗凝固薬が必要であり、リスクに応じてワーファリン、各DOACを用いる。

アスピリンは抗血小板薬であり、心房細動における血栓予防効果は否定されている


参考
不整脈薬物治療に関するガイドライン2009
心房細動治療(薬物)ガイドライン2013
国立循環器病センターホームページ
 2017/11/19

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