クレナフィンとルコナックの比較

爪白癬に適応をもつ外用剤2剤の比較

2014年に日本では初めて爪白癬に使用できるクレナフィンが発売された。
その2年後、2剤目のルコナックが発売。(成分はルリコンクリームと同じ)

この2剤、どちらもぼちぼち処方を見るので有効性、安全性等違いがあるのか調べてみました。


基本情報

クレナフィン爪外用液10%

適応:爪白癬
用法:1日1回罹患爪全体に塗布する
禁忌:本剤に過敏症の既往歴
その他:48週を超えた有効性・安全性不明
容量:1本で爪85枚分 (ホームページFAQより算出)

ルコナック爪外用液5%

適応:爪白癬
用法:1日1回罹患爪全体に塗布する
禁忌:本剤に過敏症の既往歴
その他:48週を超えた有効性・安全性不明
容量:1本で爪70枚分(メーカー回答 詳細不明)


使用上の注意(保管・開封後・手技)

クレナフィン開封後12週間以内に使用するようになっている。
また、可燃性であるため火気を避けるにとの記載がある。
蓋にハケが付いており、それで塗る。(指導せん7P参照:クレナフィン指導せん)

ルコナックは開封後の使用期限に関する記載はなし。
クレナフィン同様可燃性のため火気は避ける。
衣類の黄色、合成樹皮の軟化、塗料を溶かしたりする可能性がある。
先端が修正液ペンみたいになっており爪に押し当てると出る。使用前ガス抜きしないと噴射するので注意。(指導せん参照:ルコナック指導せん)


有効性の比較

クレナフィン、ルコナックともに爪への浸透性が高く、白癬菌のMICを上回る濃度になる。

水虫の主な原因菌(①T. rubrum 及び ②T. mentagro)に対するMIC

クレナフィン:①0.001~0.015、②0.001~0.003
ルコナック:①0.0024~0.001、②0.0005~0.002

薬剤の爪での濃度

クレナフィン
日本人の爪真菌症患者を対象とした臨床薬理試験(KP-103-03 試験)において、5%又 は 10%エフィナコナゾール液剤を趾爪に28日間反復滴下した際のエフィナコナゾールの爪中濃度を確認した。その結果、いずれの用量でもエフィナコナゾールの爪中濃度は白癬菌株の MIC の最高値(治験実施時のデータでは 0.13μg/mL、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)の抗真菌剤感受性試験法 M38-A2 に準拠して測定した最新の結果では 0.06μg/mL)以上であり、その平均値 MICの20,000 倍以上(0.06 μg/mL との比較では 40,000 倍以上)を示し、最低の爪中濃度を示した被験者でも、 MIC 値の200倍以上(0.06μg/mL との比較では 400 倍以上)の濃度であった。※1

→最低でもMICの200倍、平均2万倍となっている。


ルコナック
日本人爪白癬患者(12例)を対象に片足第1趾爪及びその周辺部に本剤を1日1回5週間塗布したときの爪中ルリコナゾール濃度(平均値±標準偏差)は、薬剤塗布1週後では12,230.50±11,150.73μg/gと速やかに吸収され、5週後の16,439.42±9,985.65μg/gまで緩やかな上昇が認められた。塗布終了後の爪中ル リコナゾール濃度は徐々に減少するが、4週後でも2,248.28±1,876.02μg/gと高い爪中濃度が維持され ていることが確認された。※2

→クレナフィンと同様MICを0.13μg/mLとすると、9万倍以上となっている。


どちらが強いかと数値だけで考えればルコナックなのかもしれませんが、どちらもMICより圧倒的に高いのであまり気にしなくてよいと思われる。
実際の臨床成績はどうでしょうか。

臨床成績比較

クレナフィンの臨床成績
主要評価は完全治癒率
日本だけのデータだとクレナフィン群で28.8%、基剤群(プラセボ)で11.9%

基剤群での改善率がやたら高い。白癬って普通なかなか治りませんが自然治癒するんですかね。そもそも瓜白癬ではなかった人がいるんですかね。


ルコナックの臨床成績

こちらはルコナック群で14.9、基剤群(プラセボ)で5.1%
群間差を見るとクレナフィンと同等=やや低いくらい。

2剤の直接比較ではないのでどちらがというのは何とも。
MICから考えて理論上はさほど変わりないと考えられる。


ちなみに、内服薬の完全治癒率はパルス療法で70-90%程度となっている。※3
やはり内服には劣ってしまっているが、肝機能障害や相互作用の問題はない。ガイドラインでも爪白癬に関しては基本的に内服治療となっている。※4


副作用の比較

どちらの薬剤も皮膚につくと接触性皮膚炎等を起こしやすいので爪以外には塗らないように指示をするが、インタビューフォームを見ると、パッチテストでは軽度刺激性となっている。

臨床試験時の副作用発現は以下の通り。

クレナフィン
安全性評価対象例1227例(日本人患者 184 例を含む)中、副作用の発現症例は 78 例(6.4%)であった。その主なものは、適用部位にみられ、皮膚炎26例(2.1%)水疱 18 例(1.5%)紅斑9例 (0.7%)、そう痒、異常感覚、腫脹、疼痛、皮膚剥脱各 7 例(0.6%)、爪甲脱落 4 例(0.3%)。

ルコナック
国内臨床試験において本剤が投与された242例中、副作用の発現症例は44例(18.2%)であった。 主な副作用は投与部位の局所性のものであり、皮膚乾燥13例(5.4%)接触皮膚炎10例(4.1%)爪囲炎8例(3.3%)湿疹6例(2.5%)皮膚炎、皮膚刺激、乾燥症各3例(1.2%)等であった。


どちらが出やすいかこれだけで決めるのは困難。
10%程度で皮膚症状がみられているので、皮膚につかないよう指導。(まったくつかないで塗るのも困難ですが)

まとめ

有効性:あまり大きな差はないと思われる。(どちらも十分にMICを超える)
安全性:皮膚症状は5-20%見られる。直接比較ではないので差は不明。
その他:開封後の期限、使用手技が異なる。

内服薬には治癒率及ばず。ガイドラインでは基本内服薬。中等度以下、相互作用、副作用が問題なる場合の選択肢。


※1 クレナフィンインタビューフォーム
※2 ルコナックインタビューフォーム
※4 第62回日本真菌学会① シンポジウム4-2 爪白癬治療用外用液の特徴と適応 ラジオNIKKEI 2019.5.13
 2019年10月30日

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