フェロミアとシナールの併用について

フェロミア(クエン酸第一鉄)にビタミンCを併用しても吸収率は変わらない? 逆に吐き気が出やすくなる?

鉄は第二鉄=3価(Fe3+)より、第1鉄=2価(Fe2+)で吸収されやすい。
このため、ビタミンCを同時服用すると2価の状態を保ったり、3価が2価に還元されてるため吸収率が良くなる。

たまにこれを狙ってか、フェロミアとシナールの同時処方を見るが、フェロミアは非イオン型鉄剤となるような工夫がされているため、ビタミンCを併用しても意味なさそうですが、実際どうなんでしょうか。


フェロミアとビタミンCの併用の有効性


エーザイホームページより

フェロミアとビタミンCを併用する意義は?

回答 :ビタミンCは還元剤としての作用があり、鉄剤とともに処方されると鉄の吸収が促進される。これはビタミンCが吸収効率の良い二価鉄の状態を保つ作用があるためである。
しかし、患者さんによっては鉄吸収率が高まる反面、胃腸障筈の副作用が増大することがある(胃腸障害は胃内の二価鉄イオンの刺激によるものである。)

フェロミアは、鉄と鉄吸収促進物質であるクエン酸との化合物であるため、特にビタミンCと併用する必要はなく、フェロミアを単独およびビタミンCと併用した比較試験では貧血改善効果に影響がない報告がされている。

 【引用】
1)鉄欠乏性貧血治療剤フェロミア処方に関するQ&A(FEA0140GKE)
2)内田立身:鉄および経口鉄剤の吸収、日本醫事新報、3640、14(1994)[FEA-0192] 3)坂口ー夫ら:第8回日本病院薬学会(1998)[FEA-0161]”


ということで、フェロミアに関してはビタミンC併用をしても有効性に差はなし。


ビタミンC併用と胃腸障害

上記エーザイのHPにはビタミンCにより2価鉄が増えると胃腸障害のリスクとなるといった内容が書かれている。

胃腸障害を考えると、フェロミアに限らずビタミンCの併用は推奨できないといった意見もある。※1

添付文書上特に併用注意などにはなっていない。

ちなみに緑茶などのタンニンを多く含む食品とは併用注意の記載があるが、緑茶程度のタンニン量であれば吸収に影響はないとされている。※2


これらはあくまで薬剤とビタミンCの話であり、通常の食事において鉄分を多く含む食品とビタミンCを同時摂取することは貧血予防になり、問題ない。※3

まとめ

非イオン型のフェロミアに関してはビタミンCの併用は不要(有効性なし)
逆に胃腸障害リスク増加の可能性があるため推奨されないといった意見もあり

通常の食事においては鉄分とビタミンCの併用は効果的



その他の記事
フェロミア、フェルム、フェログラデュメットの比較
タンナルビンとフェロミアの併用

※1 日本内科学会雑誌 第99巻 第 6 号・平成22年 6 月10日
※2 日本薬剤師会雑誌 38 : 1145―1148, 1996
※3 愛知県薬剤師会 薬事情報センター 貧血
 2019年9月6日

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