睡眠薬・抗不安の強さ一覧

睡眠薬・抗不安の比較 薬剤の強さ(力価、等価量),作用時間について

睡眠薬の不眠改善効果について、薬剤間であまり大きな差はなく、作用時間で使い分けるのがガイドライン※1的にも一般的かと思いますが、一方で高力価の薬剤を使用していると離脱症状などのリスクが高いとの記載もある。

今回はベンゾジアゼピン系薬剤を中心に力価一覧についてみていきます。


睡眠薬・抗不安薬の力価、等価表

ベンゾジアゼピン系の研究を行っているヘザー・アシュトン教授が臨床経験等をベースに作成した等価表。(アシュトンマニュアルの人)
benzo.org.ukのホームページで閲覧可能。

また、よく引用されているものに稲垣 中, 稲田俊也: 臨床精神薬理 で取り上げられているものがある。

若干の力価の違いや薬剤の有無があるため併記しています。
(稲垣のものはジアゼパム5㎎での記載であったため、全て2倍にしてジアゼパム10㎎を基準にしています。)


成分名 商品名 等価量
アシュトン
等価量
稲垣、稲田
半減期 分類
アルプラゾラム コンスタン
ソラナックス
0.5㎎ 1.6㎎ 6-12 抗不安
長時間
エスゾピクロン ルネスタ 3㎎ 5㎎ 6 睡眠薬
超短時間
エスタゾラム ユーロジン 1-2㎎ 4㎎ 10-24 睡眠薬
中間
エチゾラム デパス - 3㎎ 6※ 抗不安 
短時間
オキサゾラム セレナール 20㎎ 40㎎ 4-15 抗不安 
長時間
クアゼパム ドラール 20㎎ 30㎎ 25-100 睡眠薬 
長時間
クロキサゾラム セパゾン - 3㎎ 11-21※ 抗不安 
長時間
クロチアゼパム リーゼ 25㎎ 20㎎ 5-30 抗不安 
短時間
クロナゼパム ランドセン
リボトリール
0.5㎎ 0.5㎎ 18-50 抗てんかん
クロバザム マイスタン 20㎎ - 12-60 抗てんかん
クロラゼプ メンドン 10㎎ 15㎎ 36-200 抗不安 
長時間
ケタゾラム ケタゾラム
(日本なし)
15-30㎎ - 30-100 -
ザレプロン ザレプロン
(日本なし)
20㎎ - 2 -
ジアゼパム セルシン 10㎎ 10㎎ 20-100 抗不安 
長時間
ゾピクロン アモバン 15㎎ 15mg 5-6 睡眠薬 
超短時間
ゾルピデム マイスリー 20㎎ 20mg 2 睡眠薬 
超短時間
タンドスピロン セディール - 50㎎ 1.2-1.4※ 抗不安
テマゼパム テマゼパム
(日本なし)
20㎎ - 8-22 -
トフィソパム グランダキシン - 250㎎ 0.8※ 自律神経調節
トリアゾラム ハルシオン 0.5㎎ 0.5mg 2 睡眠薬 
超短時間
ニトラゼパム ベンザリン 10㎎ 10mg 15-38 睡眠薬 
中間
ノルダゼパム ノルダゼパム
(日本なし)
10㎎ - 36-200 -
ハロキサゾラム ソメリン - 10㎎ 42-123※ 睡眠薬
長時間
フェノバルビタール フェノバール - 30㎎ 37-133※ 催眠/鎮静/抗不安
プラゼパム プラゼパム
(日本なし)
10-20㎎ - 36-200 -
フルトプラゼパム レスタス - 3.3㎎ 130-240※ 抗不安
長時間
フルニトラゼパム サイレース 1㎎ 2㎎ 18-26 睡眠薬
中間
フルラゼパム ダルメート 15-30㎎ 30㎎ 40-250 睡眠薬 
長時間
ブロチゾラム レンドルミン - 0.5㎎ 7※ 睡眠薬 
短時間
ブロマゼパム レキソタン
セニラン
5-6㎎ 5㎎ 10-20 抗不安 
中間
ヘラゼパム ヘラゼパム
(日本なし)
20㎎ - 30-100 -
メキサゾラム メレックス - 3.3㎎ 76※ 抗不安 
長時間
メダゼパム レスミット 10㎎ 20mg 36-200 抗不安 
長時間
リルマザホン リスミー - 4㎎ 10※ 睡眠薬 
短時間
ロフラゼプ メイラックス - 3.3㎎ 122※ 抗不安 
長時間
ロプラゾラム ロプラゾラム
(日本なし)
1-2㎎ - 6-12 -
ロラゼパム ワイパックス 1㎎ 2.4mg 10-20 抗不安 
中間
ロルメタゼパム エバミール 1-2㎎ 2mg 10-12 睡眠薬 
短時間

良く処方される薬剤
ブロチゾラム0.5㎎≒ゾルピデム20㎎≒トリアゾラム0.5㎎≒ルネスタ3-5㎎

デパス3㎎≒リーゼ20-25㎎≒セルシン10㎎≒レキソタン5-6㎎

アシュトンと稲田らの報告で結構異なる部分もあるので参考といったところでしょうか。
デパスとリーゼも臨床のイメージにあいませんし・・・



ベンゾジアゼピン系・睡眠薬の基本知識(ガイドライン抜粋)


不眠治療のアルゴリズム


生活指導の内容
運動:定期的に運動。適度な有酸素運動
寝室環境:⾳対策のためにじゅうたんを敷く、ドアをきっちり閉める、遮光カーテンを⽤いる。寝室を快適な温度に保つ。
食生活:規則正しい⾷⽣活。空腹のまま寝ない。空腹で寝ると睡眠は妨げられる。睡眠前に軽⾷(特に炭⽔化物)をとると睡眠の助けになることがある。脂っこいものや胃もたれする⾷べ物を就寝前に摂るのは避ける。
水分摂取量:就寝前の⽔分就寝前に⽔分を取りすぎないようする。
カフェイン:就寝前のカフェイン就寝の4時間前からはカフェインの⼊ったものは摂らないようにする。
飲酒:就寝前のの飲酒は逆効果。アルコールを飲むと⼀時的に寝つきが良くなるが、徐々に弱まり、夜中に⽬が覚めやすくなる。
寝床での考え事:昼間の悩みを寝床に持っていかないようにする。⾃分の問題に取り組んだり、翌⽇の⾏動について計画したりするのは翌⽇にする。


薬物治療

治療選択

・ベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬の選択基準として、不眠症を⼊眠困難型、睡眠維持障害型(中途覚醒、早朝覚醒)に分類し、⼊眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬、睡眠維持障害型には消失半減期がより⻑い睡眠薬が推奨されている。

・⼊眠困難と睡眠維持障害の両者を有する患者に対して、異なる半減期を有する複数の睡眠薬を併⽤することに科学的根拠はなく、むしろ副作⽤のリスクを⾼める可能性がある。

・少なくとも治療初期には、可能な限り単剤(⽤量調整)で対処することが望ましい。また、リズム異常を有する不眠症に対してはメラトニン受容体作動薬が第⼀選択肢となる。

・睡眠薬を定期的に毎晩服⽤せずに、眠りにくい夜だけ頓⽤しても不眠症状は悪化しない。(ゾルピデムの頓⽤が定期服⽤時と同等の治療効果を有し、また認容性に優れていることを⽰す複数のエビデンスがあり。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は頓⽤△:休薬夜に薬物離脱性の不眠症状の悪化が⾒られる危険性が否定できない。)

多剤併用

・常⽤量の睡眠薬を服⽤しても効果が不⼗分な場合に、睡眠薬の多剤併⽤がより有効であるというエビデンスは無い。副作⽤リスクを低減するためにも、多剤併⽤はできるだけ避けるべきである。 特に、三種類以上のベンゾジアゼピン系ないし⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬の併⽤は避けなくては いけない。


効果発現

⼤半の睡眠薬は服⽤開始後10分〜30分で催眠作⽤が発現する。不眠症への有効性は、ベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬も概ね1週以内に発現するが、1〜2週間以上継続することでさらに主観的な睡眠潜時の短縮や睡眠の質の改善が得られる割合は増加する。またメラトニン受容体作動薬ラメルテオンも早期に効果は発現するが、12週間程度継続服⽤することで睡眠潜時の短縮効果がもっとも⾼くなることが期待される。(※ 1 Q2) 


頓服使用について

・睡眠薬を定期的に毎晩服⽤せずに、眠りにくい夜だけ頓⽤しても不眠症状は悪化しない。(ゾルピデムの頓⽤が定期服⽤時と同等の治療効果を有し、また認容性に優れていることを⽰す複数のエビデンスがあり。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は頓⽤△:休薬夜に薬物離脱性の不眠症状の悪化が⾒られる危険性が否定できない。)

・中途覚醒時の頓服服用について:夜間不眠時の睡眠薬の頓⽤は不眠症状に対して⼀定の効果が期待できるものの、その最適な服⽤法に関するエビデンスは乏しい。持ち越し効果は消失半減期より⻑く持続する可能性があるため、頓⽤薬は超短時間作⽤型の睡眠薬とし、起床時刻の6〜7時間前までに服⽤することが望ましい。


薬剤耐性

ベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬の間で短期的効果には⼤きな差はない が、⻑期服⽤時の効果の持続性(耐性不形成)は⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬でのみ⽰されている。(※1 Q1)


減量方法

・睡眠薬の減量、休薬法に関する多数のランダム化⽐較試験およびメタ解析研究がある。睡眠薬の 減量法として、1)漸減法、2)認知⾏動療法、3)補助薬物療法、4)⼼理的サポートが有効で あることが明らかにされている。

1-2週間毎に、服用量の25%ずつ、4-8週間かけて減薬・中止。※2

・ジアゼパム換算40mgを内服していた場合は、1-2週間毎に2mgずつ、20mgからは1-2週間毎に1mgずつ減薬。※3


食品・サプリ・酒

・アルコールと睡眠薬の併⽤は、副作⽤の頻度と強度を⾼める可能性があるため、原則禁忌である。 アルコールを代謝した後に睡眠薬を服⽤することは可能である(成⼈男性で、コ ップ1杯のビールの代謝に約2時間。晩酌後には睡眠薬を服⽤しないことが無難)

・不眠症に対する効果を謳うサプリメントが多数あるが、エビデンスレベルの⾼い臨床試験により有効性が検証されているものはごく少なく、また安全性の検証はほとんど⾏われていない。したがって、サプリメントを不眠症の治療に⽤いることは推奨されない


疾患(合併症)別

認知症の不眠症に対する睡眠薬の有効性は確認されていない。転倒、認知症悪化に注意。

神経疾患(パーキンソン、脳卒中)に併存した不眠に対する薬物治療の効果と安全性について検討した⼤規模試験はなく、 確⽴されたエビデンスやコンセンサスは得られていない。

痒みによる不眠:臨床効果は実証されていない。治療に際しては、第⼀に⽪膚症状や痒みをおさえる治療。その後も不眠が残存する場合には⽤いることは許容できる。

疼痛、頻尿:睡眠薬以外を考慮。睡眠薬の投与も可能。

睡眠時無呼吸症候群:メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)の安全性が優れている。ベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬は呼吸状態の悪化を認めることがあると報告。




その他:睡眠薬・抗不安薬の関連の記事

ロヒプノールとベンザリンの比較
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デパスとリーゼの違い
マイスリー、レンドルミン、ハルシオンの違い
ルネスタ、ベルソムラ、ロゼレムの違い


※1睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン
※2平成30年度 第1回 薬剤師卒後教育研修講座 資料内 睡眠薬の適正使用・休薬ガイドラインより
※3平成30年度 第1回 薬剤師卒後教育研修講座 資料内 アシュトンマニュアルより
 2019年3月12日

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